スピーチを聞き手とつなげるための3つのツール

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皆さんが普段スピーチをする際、どんな視点で話をしているでしょうか? 自分・自社の視点から、聞き手のためになる成功事例や秘訣を共有する。このような視点で話すことは多々あると思います。営業トークの時などは特にそうでしょう。しかしそれを聞いた聴衆の頭には、おそらく次のいずれかが思い浮かぶことでしょう。
「この人は自信満々な人だな……」
「この人は特別な人だから成功したんだな……」

スピーカーとして人前に立って何かを話す、ということは、特別な何かを持っていたり経験していたりしないといけないもの、というステレオタイプを持っていませんか? それは大きな間違いです。スピーカーとして、聞き手に「この人は特別だ。すごい」と思わせることは、実は好ましいことではありません。それは、スピーカーが特別な存在に見えてしまうと、聞き手は「あの人は特別だからそんなことができるのであって、自分は普通の人間だから無理」と感じてしまい、どんどん距離が離れ、スピーカーのメッセージに聞き手が価値を見いだせなくなってしまうからです。

常に聞き手の視点に立ち、「私もあなた方と同じような普通の人間です。こんな苦労や失敗をしたんです」と距離感を埋めることで、初めて聞き手はあなたのメッセージに耳を傾け、価値を見いだすことができるのです。しかし、ついつい気づかぬうちに「自分視点」のメッセージになってしまいがちです。

そんな落とし穴を防ぐために、次の3つの「聞き手とつながるツール」をご紹介します。

聞き手とつながるツール その1:プロセスを強調する

営業などの際には、もちろん自社や自社商品の優れた点をアピールしなければなりません。ミーティングなどでも、自分の意見がいかに優れているかを主張する必要があります。ここで大切なのは、強調すべきは「人(または会社)」ではなく、「プロセス」であるということです。つまり、自分の成功や優れた点を自慢するのではなく、そこに至った「旅路」の中で得た、成功の「プロセス」(商品ならば、フォーミュラ、レシピなど)を強調するのです。すると聴衆は、その「プロセス」に興味を惹かれ、それを学んでみたい、と思うようになります。

しかし、これだけではまだ不十分です。この段階では、その「プロセス」に興味を持ったものの、どのような内容なのか、自分にとってどんな効果があるのか分からないからです。そこで、ツール その2をご紹介します。

聞き手とつながるツール その2:定量的に数字を示す

プロセスを定量化することです。ステップ分けする、といってもよいでしょうか。例えば、「自己実現をするため、アリストテレスからトニー・ロビンズまで、昔も今も変わらず共通して使われているフォーミュラがあります。4ステップ・フォーミュラです」「私がこの体験から学んだことは、変革を、自分にとってマイナスではなくプラスに活用するためには4つのRを実践する、ということです」といった具合です。

このように、プロセスが定量化されると、単にプロセスを並べ立てられるよりも、急に具体性が増し、実現度が高まるような気になるものです。さらに、聴衆の興味の持続にもつながります。それは、プロセス自体に興味を持ったら、プロセス1だけではなく、最後の4まで聞きたい、と思うからです。

しかし、もしプロセスが定量化されていなければ、まだいくつか話すべきプロセスが残っているのに、聞き手は「もう十分いい話を聞いた」と感じてしまい、最後まで聞く耳が持続しない可能性が高くなるのです。ですから最初に、〇つのプロセス、と定量的に数字を示すことで、「あともう2つあるんだな。なんだろう?」と思わせるきっかけ作りができるのです(このコラムでも「3つのツール」と最初にお伝えしていますね!)。その結果、そのプロセスが自分にとっても分かりやすく、実現しやすく、効果もあるものだ、と感じてもらうことができることでしょう。

しかし、中には懐疑的な聴衆もいます。確実に納得してもらうためにはどうしたらよいのでしょうか。それがツール その3です。

聞き手とつながるツール その3:失敗談を語る

あなたが伝えたメッセージをもとに、聞き手にアクションを取ってもらいたいならば、あなた(=スピーカー)は特別な存在ではなく、聞き手と同じような人間なのだ、と思わせなければいけません。そのためには、失敗談(営業ならば、商品開発の苦悩や秘話など)を語ることが1つの有効な方法として挙げられます。

例えば、筆者の場合、今ではパブリックスピーキングのコーチングをしていますが、MBAの初日のクラスで自己紹介した時、単なる自己紹介なのに脇汗をびっしょりかき、いざ自分の順番が回ってきたら、言おうと思って頭の中で練習していたこととは全く違うことが口をついて出てしまい、いきなりフリーズしてしまい、その後スピーチの苦手意識がなかなか払しょくできなかったという話をよくします。そうすると「スピーチコーチは昔からしゃべりが得意だったんだろう」という「特別感」が覆され、「コーチにもそんな過去があったのか。じゃあ私にもできるようになるかも」と感じてもらえるのです。

このような、失敗、欠点、苦悩・フラストレーション、初めての体験、などをオープンに共有することで、聞き手はぐんとスピーカーであるあなたに距離が近づいてきます。これを4つのF、と覚えてください。Failures(失敗)、Flaws(欠点)、Frustrations(苦悩)、Firsts(初体験)、です。

スピーカーとしてのあなたの役割は、聞き手に、「このプロセス(フォーミュラ、ツール、レシピ……etc.)を使えば、望まれる結果や最終的な効果が得られる」というメッセージを売ることである、ということをよく覚えておきましょう。そのためには、聞き手とつながることが必要です。

①人ではなく、プロセスにフォーカス
②プロセスを定量化
③4つのFを共有する

次回スピーチを行う際はぜひ、この3つのツールに留意してみましょう。

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投稿者プロフィール

リップシャッツ 信元 夏代
リップシャッツ 信元 夏代(りっぷしゃっつ・のぶもと・なつよ)
早稲田大学商学部卒。ゼミ専攻は「異文化コミュニケーションとビジネス」。NYUにてMBA取得。1995年に渡米後、伊藤忠インターナショナルにて鉄鋼、紙パルプ業界の営業・事業開発に携わる。その後マッキンゼーにて消費財マーケティング・事業プロセス改革などの業務に携わった後、2004年に、事業戦略コンサルティング会社のアスパイア・インテリジェンス社を設立。
 2013年、2014年春季トーストマスターズインターナショナルの国際スピーチコンテストでは、日本人初の地区大会優勝2連覇を果たしている。この経験を受け、2014年9月にブレイクスルー・スピーキングを設立。グローバルに活躍したい日本人のためのグローバルパブリックスピーキングのE-learningプログラムを中心に、個人コーチングセッション、企業内研修なども行う。TEDxTalkスピーカー。