リハーサル5つの間違い

,

効果的なリハーサルをしていますか?

どんなスピーチであれ、リハーサルが欠かせないことはいうまでもありません。筆者は競技ダンスの選手もしていますが、コーチからよく言われるのは、「本番では、よくても練習の80%くらいにクオリティーが落ちるもの。だから常に本番さながらに練習していないといけない」ということです。スピーチも同様です。しかし、本気度を高めて練習するだけでよいかというとそうでもありません。みなさんは、「正しい」リハーサルを行っているでしょうか?

今回は、リハーサルによく見られる5つの間違いをご紹介します。

●NGリハーサル#1: 鏡の前で練習する

実はこれ、筆者もつい最近までやっていたことです。自分の表情やボディーランゲージなどを確認しながらリハーサルをしていたのですが、筆者が日本人として唯一認定を受けているWorld Class Speakingスピーチコーチ認定プログラムの大師匠から「それはまさに間違いナンバーワンだ」と指摘を受けてしまいました。

なぜかというと、本番では自分の姿を見ながら話すことなんて決してありえないからです。観客を見て話しをするのです。本番さながらに練習するためには、鏡に映った自分ではなく、聴衆を想像しながらすべきなのです。また、スピーチというのは、自分自身ではなく、聞き手中心の視点が大切なのです。ですから、鏡に映った自分ではなく、聞き手を想像しながら練習をしましょう。もし表情やボディーランゲージを確認したければ、ビデオに撮影し、それを後でレビューするのがよいでしょう。

●NGリハーサル#2: 自然発生的な場面を想定しない

スピーチをする際、必ず聞き手からなんらかの反応が返ってきます。笑いだったりうなずきだったり、あるいは疑いの表情であったり。このような聞き手の反応は、双方向コミュニケーションをして彼らとコネクトする最大のチャンスです! しかしリハーサルの際、それを全く考慮せずに、最初から最後まで通して練習をしていると、せっかく沸き起こった反応を素通りし、練習どおりにそのまま次に進もうとしてしまったら、せっかくのコネクトするチャンスを失ってしまいます。リハーサルの時から、聞き手の自然発生的な反応を想定しながら、間をおいたり、架空の反応に反応してみたりする練習を加えてみるとよいでしょう。

●NGリハーサル#3: 声に出すリハーサルしかしない

スピーチのリハーサルですから、当然、声に出して本番さながらにやらないといけません。しかし、それと同じくらい効果があるのが、目をつぶって、その場面を想像しながら、頭の中でリハーサルをすることです。少々つぶやいてもいいかもしれません。本番をビビッドに視覚化できればできるほど、臨場感を持つことができ、本番当日はリラックスして臨むことができるのです。筆者はよく、タクシーや電車の中などの移動中や、夜ベッドに入ってすぐ、寝付くまでの間に「視覚化リハーサル」を行っています。

●NGリハーサル#4: 常に最初から最後まで通し練習をする

例えば、30分のスピーチだとしましょう。最初からリハーサルを始めたものの、10分くらいたったところで電話がかかってくる、誰かに呼ばれる、あるいは、スマートフォンにメッセージが入ったと知らせる音が鳴る、などなど、練習が中途半端に途切れてしまい、そのままリハーサルを中断……なんていうことはありませんか? 気を取り直してまた最初から練習開始……そうするとどんなことが起こるでしょうか。出だしは必ず練習ができるのでよいものの、中盤に差し掛かると練習不足が目に見えてしまったり、エネルギーが続かなかったり。このようなスピーチを「下り坂スピーチ」といいます。高いところから始まるものの、そのまま下り坂で終わってしまうスピーチです。

ではこれを避けるためにはどのような練習方法がよいのでしょうか。 それは、パーツごとに分けた練習です。

1つのスピーチを、5つくらいのパーツに分けてみましょう。そして、毎回、違うパーツから練習を始めてみるのです。また、自信のないパーツがあれば、そこだけを何度も練習します。こうすることで、全てのパーツに満遍なく力を入れることができるのです。もちろん、本番さながらの通し練習も必要であることはいうまでもありません。

●NGリハーサル#5: 座ったまま暗唱

リハーサルとは「原稿をしっかり覚えて、言えるようにすること」だと勘違いしていませんか(ましてや、原稿を「読む」ことだ、という大きな勘違いをしていませんか)? これは大きな間違いです。リハーサルの目的は、メッセージを「インターナライズ」すること、つまり「自分のものとして内面に取り込むこと」が目的です。リハーサルの際も、演台を離れて、ストーリーを語ってみましょう。ストーリーの部分とナレーションの部分、重要なメッセージの部分では、動き方が異なるはずです。実際に立って、動きながら練習をしてみることです。

今回は、5つのNGリハーサルについてお話ししました。

しかし、最大の間違いがもう一つあります。それは、リハーサルをしないこと。「内容は熟知してるから大丈夫」、「かえってリハーサルしない方が自由に話せてよい」とおっしゃる方。「自分視点」になっていませんか? 自分自身がうまく話し、プレゼンテーションを終わらせることが目的になっていませんか? スピーチの目的は、聞き手になんらかの影響を与えることです。買うという行動、賛同、士気アップ、知識習得などなど、様々な「影響」が考えられます。つまり、スピーチは、聞き手視点で行うものであり、決して自分視点で行うものではありません。「スピーチを通し、相手の心をつかむ」ことに成功したいならば、リハーサルは絶対的に欠かせません。そして何より、周到な準備から生み出される質の違いは、聞き手に必ず伝わるものなのです。

投稿者プロフィール

リップシャッツ 信元 夏代
リップシャッツ 信元 夏代(りっぷしゃっつ・のぶもと・なつよ)

早稲田大学商学部卒。ゼミ専攻は「異文化コミュニケーションとビジネス」。NYUにてMBA取得。1995年に渡米後、伊藤忠インターナショナルにて鉄鋼、紙パルプ業界の営業・事業開発に携わる。その後マッキンゼーにて消費財マーケティング・事業プロセス改革などの業務に携わった後、2004年に、事業戦略コンサルティング会社のアスパイア・インテリジェンス社を設立。
 2013年、2014年春季トーストマスターズインターナショナルの国際スピーチコンテストでは、日本人初の地区大会優勝2連覇を果たしている。この経験を受け、2014年9月にブレイクスルー・スピーキングを設立。グローバルに活躍したい日本人のためのグローバルパブリックスピーキングのE-learningプログラムを中心に、個人コーチングセッション、企業内研修なども行う。TEDxTalkスピーカー。