目は口ほどにものを言う

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皆さんは、スピーチしている時の自分の癖を知っていますか?

「ついつい腕を組んでしまう」「緊張していて左右に頻繁に揺れている」「調子をとろうとするたびに手を合わせてしまう」「手のやり場が分からず後ろで組んだままになっている」「顔に落ちてくる髪の毛を耳にかける動作を何度もしている」「ネクタイや袖などを知らず知らずのうちに触っている」……など。

スピーチ中は、結構自分では気づかぬまま、ついつい癖が出てしまうもの。しかしボディーランゲージから発せられるメッセージは、非常に大きいのです。実は「発する言葉」よりも聞き手に大きな影響を与えるものなのです。

スピーチの大敵

ではデリバリーの際、どんなボディーランゲージを心掛ければ、聞き手によい印象を与えられるのでしょうか。特にグローバルな環境でのスピーチを想定してみたいと思います。

外国人はボディーランゲージがダイナミックなので、それに見劣りしないよう大きな動きをすればよいのでしょうか?

違います。もちろん、スピーチ中、同じ姿勢をずっと保っていたり、ほとんど見えないような動きしかしなかったりでは聞き手は飽きてしまいますので、動きは大切です。パブリックスピーキング界の大御所、Patricia Frippは、常にこのように言っています:

「The biggest enemy of public speaking is sameness」

つまり、スピーチの大敵は、「無変化」ということです。

声のトーンやスピードなどが単調であると、聞き手は催眠術にかかったように眠くなってしまい、集中力や興味が途切れてしまうことでしょう。表情が一定なのも、感情が伝わらず、共感を得ることが難しくなることでしょう。体の動きについても同様です。同じ姿勢、同じ立ち位置でずっと話していたら、場の変化が生まれず、聞き手の注目を引き続けることはできません。

日本では、最初から最後まで、演台の後ろに立ったまま講演を行うパターンがよく見られますが、実はこのスタイルは、「スピーチの大敵」スタイルなのです。このスタイルは、「無変化」が続くだけでなく、演台が聴衆との距離を作ってしまうため、「クローズド」な印象を与えてしまうのです。

オープンな姿勢を保つ

効果的なボディーランゲージのコツは、「オープン」であることです。話し手と聴衆との間にあるものは極力排除し、腕を組んだりせず、オープンな姿勢を保つことです。

マイクはクリップ式がベストです。先日、アメリカ有数のモチベーショナルスピーカーである、ウォルター・ボンド氏のセミナーに参加しました。ウォルター氏は、手持ちマイクを持った場合と、クリップ式マイクの場合の違いを実演して見せてくれました。手持ちマイクの場合、マイクを持っている側を観客に向けながら動いてしまうと、「クローズド」な姿勢に見えてしまう、という落とし穴があるのです。一方で、クリップ式の場合は両手がフリーになりますから、ダイナミックなボディーランゲージを見せることができます。

それでも会場の都合で手持ちマイクになってしまうこともあるでしょう。そんな時は、極力正面を向いて話す、あるいは、動く時には、聴衆側にはマイクを持たない、という配慮が必要です。

意味のある動きを

また、動きの一つひとつに意味を持たせる、ということも非常に大切です。例えば、少々古いですが、東京オリンピック誘致の際に有名になった、「お・も・て・な・し」を思い出してみてください。

あの時の滝川クリステルさんは、余計な動きはほとんどせず、「お・も・て・な・し」のところだけ、特徴のある手の動きを見せ、そこを目立たせていました。つまり、スピーチのなかで強調したい部分にのみ、効果的な動作を加えてみるのです。そうすると、聞き手にとっては、視覚的・言語的にメッセージが入ってくるので、よりメッセージが印象深く脳裏に刻まれることになります。

また、何かのタイムラインについて話しているとしましょう。会社の歴史・変革などについて話していると想像してみてください。その場合、例えば、舞台の下手で、初期段階、あるいは過去の話をし、中央に移動して次段階、または現在の話をし、そして上手に移動して近年、または未来の話をする、というように、段階ごとに場を移動することで、どんどん変革していっている様子を、視覚的にも伝えることができます。

何かストーリーを話しているならば、見えない舞台セットを想定してみましょう。「自分の部屋はここ」「玄関はここ」「リビングルームはここ」などのように自分の心の中で立ち位置を設定し、自分の部屋の中のストーリーを話している時はその位置に、リビングルームに移動したならばその位置に移動、自分の部屋に戻ってきたならばまたその位置に移動する……というように、架空の舞台セットに基づいて動くことで、聞き手にも、話し手のストーリーの世界が見えてきて、その世界に入り込んでいくのです。

ボディーランゲージは、あなたが伝えたいメッセージを効果的に強調し、聞き手があなたの世界に入り込んだかのように疑似体験させるための効果的なツールなのです。

投稿者プロフィール

リップシャッツ 信元 夏代
リップシャッツ 信元 夏代(りっぷしゃっつ・のぶもと・なつよ)
早稲田大学商学部卒。ゼミ専攻は「異文化コミュニケーションとビジネス」。NYUにてMBA取得。1995年に渡米後、伊藤忠インターナショナルにて鉄鋼、紙パルプ業界の営業・事業開発に携わる。その後マッキンゼーにて消費財マーケティング・事業プロセス改革などの業務に携わった後、2004年に、事業戦略コンサルティング会社のアスパイア・インテリジェンス社を設立。
 2013年、2014年春季トーストマスターズインターナショナルの国際スピーチコンテストでは、日本人初の地区大会優勝2連覇を果たしている。この経験を受け、2014年9月にブレイクスルー・スピーキングを設立。グローバルに活躍したい日本人のためのグローバルパブリックスピーキングのE-learningプログラムを中心に、個人コーチングセッション、企業内研修なども行う。TEDxTalkスピーカー。