共感を集める真のリーダーに必要なスピーチの要素とは

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2月は、冬季オリンピック、そして、アメリカ最大のスポーツイベント、スーパーボウルがあり、スポーツ観戦ざんまいの1カ月でした。

スポーツにつきものなのが、インタビュー。今回は、スーパーボウルで印象に残ったスピーチについてお話ししたいと思います。

優勝に導いた、「バックアップ」リーダー

それは、スーパーボウルで初勝利となった、フィラデルフィア・イーグルスのクオーターバック、Nick Folesのスピーチです。

実は本来のクオーターバックであるCarson Wentzが、負傷のため残りのシーズンが休場となってしまい、「バックアップ」のクオーターバックであったNick Folesが、仮リーダー役を務めていました。

「バックアップ」クオーターバックなのでスーパーボウルまでいくことすら無理だろう、といわれていたのが、Nick Folesは最初から最後まで冷静沈着、かつ素晴らしいリーダーシップにより、どんどん勝ち進み、最終的には、強敵であり、フットボール界の大スター、クオーターバックのTom Bradyが率いるニューイングランド・ペイトリオッツを打ち負かし、「負け犬」と呼ばれていたイーグルスを、スーパーボウル・チャンピオンにまで導いたのです。

その功績がたたえられ、Nick Folesは今シーズのMVPに輝きました。その記者会見で、とある記者がこう尋ねました。

「You have a unique journey here. What would you like people to take from your journey from the last few years and be inspired by ?」

(あなたのジャーニーはユニークなものです。あなたの過去数年間のジャーニーから人々が学べること、何かインスパイアされることはなんでしょうか?)

「私はスーパーマンではない」

それに対するNick Folesのスピーチがとても素晴らしいものでした。必ずしも、スピーカーとしての力量が素晴らしい、ということではありません。メッセージの内容を見てみてください:

「I think the big thing is, don’t be afraid to fail. Failure is part of life. That’s part of building character and growing. Without failure, who would you be? I wouldn’t be up here if I hadn’t fallen thousands of times, made mistakes. We are all human. We all have weaknesses. Share that and be transparent. I know when listen to people speak and they share their weaknesses, I’m listening. Because I can resonate. So I’m not perfect. I’m not Superman. Might have won the Super Bowl, but I still have daily struggles. When you have struggles, that’s just an opportunity for your character to grow. So if something is going on in your life, embrace the struggle. Because you are growing. 」

簡潔に要約すると、
「失敗を恐れないこと。失敗は成長につながる。自分自身もたくさんの失敗をしてきたし、スーパーボウルで勝ったからといって、私は完璧でもスーパーマンでもなんでもない。だから私は、自分の弱みのことを話す人には共感するし、耳を傾ける。弱みや苦悩を経ることは、成長のための機会なのだ」
ということです。

ここで注目したいのは、Nick Folesは自分自身の成功の秘訣などは一切話しをしていない、ということです。MVPまで獲得し、それこそスーパーマンのようだ!と皆が彼の功績をたたえているところで、彼は「失敗」や「弱み」にフォーカスした回答をしたのです。

共感を集める真のリーダー

これは実は、共感を得るスピーチの大きな鍵となることなのです。

Nick Folesも言っているように、人は、「自分の弱みのことを話す人に共感」するものなのです。成功話にフォーカスすると、自慢話に聞こえる場合もあれば、そうでなかったとしても、「あの人は(スーパーマンのように)特別だから。平凡な自分には無理」、と感じ、共感どころか、聞き手と話し手の間に距離が生まれてしまうのです。

Nick Folesのインタビューから学べることは、自分の弱みや失敗、葛藤・苦悩などをさらけ出すことで、聞き手の共感度が高まる、ということです。しかしそれは話し手にとっては少々つらいことかもしれません。自分自身痛い部分をあえて掘り起こし、さらには公の場でさらけ出すわけですから、心地の良いものではありませんし、勇気がいることでしょう。成功話をした方がよほど楽です。しかし、共感を集め、尊敬される真のリーダーは、自分の弱みをさらけ出すことも自然体で行うことができる人物なのではないでしょうか。Nick Folesからまさにそれを学んだように思います。

投稿者プロフィール

リップシャッツ 信元 夏代
リップシャッツ 信元 夏代(りっぷしゃっつ・のぶもと・なつよ)
早稲田大学商学部卒。ゼミ専攻は「異文化コミュニケーションとビジネス」。NYUにてMBA取得。1995年に渡米後、伊藤忠インターナショナルにて鉄鋼、紙パルプ業界の営業・事業開発に携わる。その後マッキンゼーにて消費財マーケティング・事業プロセス改革などの業務に携わった後、2004年に、事業戦略コンサルティング会社のアスパイア・インテリジェンス社を設立。
 2013年、2014年春季トーストマスターズインターナショナルの国際スピーチコンテストでは、日本人初の地区大会優勝2連覇を果たしている。この経験を受け、2014年9月にブレイクスルー・スピーキングを設立。グローバルに活躍したい日本人のためのグローバルパブリックスピーキングのE-learningプログラムを中心に、個人コーチングセッション、企業内研修なども行う。TEDxTalkスピーカー。