どんなスピーチでも、第一印象が大切です。最初の7秒でスピーカーの印象が決まり、30秒で、スピーチに興味を持てるかどうか判断されてしまう、という7秒ー30秒ルールについては以前にもこのコラムでお話ししました。

ブレイクスルー・スピーキング(http://www.btspeaking.com)
では、受講者の皆さんに「オープニング7つの手法」を学んでいただいていますが、時折、こうおっしゃる方がいらっしゃいます。
「最初にジョークを交えて話すとアイスブレイクになっていいんだよね」。

そうでしょうか? 実はここに大きな落とし穴があります。

「ユーモア」のあるオープニングは効果的ですが、これは「ジョーク」とは性質の異なるものなのです。

ユーモアとジョークはどう違う?

プロのコメディアンをよく観察してみてください。

彼らは面白いことをただ言っているだけではありません。絶妙なタイミング、間、緩急のつけ方、声の表現力、表情、体の動き、オチでドカンと笑いを取るストーリー構成……。すべてが計算されつくされているからこそ、笑いが起きるのです。彼らは「笑いのプロ」ですから、常に、笑いのネタにもアンテナを張っていることでしょう。

それを素人がやろうとするとどうなるでしょう? ご想像することはたやすいと思います。

「笑いをとろう」と思ってジョークを一発言ってみる、ではなかなか人は思ったように笑ってくれません。万が一うまくいって笑ってくれたとしても、笑いを取ることを目的としたジョークは、本題とは直接関係ないことが多いものです。せっかく笑いが取れても、その後急に話題の異なる本題に移ってしまったら、その場の空気感は、一気に冷え切ってしまうことでしょう。これでは7秒ー30秒ルールも逆効果になってしまいます。

一方で、「ユーモア」はスピーチにおいて大切な要素です。ユーモアとジョークの大きな違いを一言でいうならば、ジョークは「笑い」を目的にしているのに対し、ユーモアは「笑い、学ぶ」ことを目的とする、という点です。

ユーモアは宝探し

ジョークのように、「どこかに笑いを取る箇所を作ろう」と思って、「笑いを挿入」すると、ぎこちなくなったり無理があったりするものです。

ユーモアは、実はあらゆるところに潜んでいるのです。なんの変哲もない普通の日常に思えることにも、ユーモアは潜んでいます。言い方をちょっと工夫するだけで、ユーモアあふれる内容になることもありますし、たった一言を加えたり、言う順番を変えるだけで笑いが起こったりすることもあるのです。そうすると、観客も、その意外性に不意を打たれ、ついついわれを忘れて笑ってしまうことでしょう。

肝心なことは、普通の出来事のなかに潜んでいるユーモアを探し出し、引き出し、磨いてあげること。宝探しのようなものです!

ユーモアを引き出すには

次の例を見てみましょう。セールスパーソンたちに、営業のコツを伝えるプレゼンを聞いていると想像してください。

 1年後、今の自分の売り上げの3倍の成績を出したいと思いますか?

わが社の、“売り上げを3倍にする52のコツ”プログラムにサインアップすれば、毎週1つずつのコツを配信します。52週目つまり1年後には必ずあなたの売り上げが3倍になっていることでしょう。

さて、ここでストップ。サインアップする気になりましたよね?

でも、もし私がこんな営業トークをしたらどうでしょう?

“プログラムにサインアップすると、52週連続で私からE-mailが届きます”(★)。

誰もサインアップする気になりませんね?

営業では、“得られる結果”を先に述べ、次に“結果を得るための正しいプロセス”を、“正しい言い方で”伝える、というポイントが大切です。

(★)のところで必ず観客から笑いが起こることでしょう。なぜでしょう? そんな言い方はあり得ないからです。しかしそれ以上に笑いが起こる理由があります。

“正しい”言い方&“NG”な言い方、を対比させることで、間違った言い方がユーモアあふれた内容に聞こえてきます。ただしここで重要な注意点が一つあります。対比させる順番を間違ってはいけない、ということです。上記の例では、“正しい”言い方をしっかり頭に焼き付けたからこそ、“NG”バージョンが、面白おかしく聞こえる、という効果が生きるのです。

そのほかにも、対比する事例、ストーリー、事実、などなど、対比を出すことでユーモアを発掘できるケースが多々あります。つまり、ユーモアを引き出すポイントは、「対比」にあるのです。

この対比を出すための3つの基本ステップは次のとおりです。

Step 1 “正しい”プロセスは何か? を考える
Step 2 “NG”プロセスは何か? を考える
Step 3 両方のプロセスを立て続けに述べる。ただし、“正しい”プロセスを先に述べる

では、シリアスなプレゼンなど、ユーモアを引き出すのが難しそうなケースではどのようにしたらいいのでしょう?

次回のコラムでお話しいたします!

投稿者プロフィール

リップシャッツ 信元 夏代
リップシャッツ 信元 夏代(りっぷしゃっつ・のぶもと・なつよ)
早稲田大学商学部卒。ゼミ専攻は「異文化コミュニケーションとビジネス」。NYUにてMBA取得。1995年に渡米後、伊藤忠インターナショナルにて鉄鋼、紙パルプ業界の営業・事業開発に携わる。その後マッキンゼーにて消費財マーケティング・事業プロセス改革などの業務に携わった後、2004年に、事業戦略コンサルティング会社のアスパイア・インテリジェンス社を設立。
 2013年、2014年春季トーストマスターズインターナショナルの国際スピーチコンテストでは、日本人初の地区大会優勝2連覇を果たしている。この経験を受け、2014年9月にブレイクスルー・スピーキングを設立。グローバルに活躍したい日本人のためのグローバルパブリックスピーキングのE-learningプログラムを中心に、個人コーチングセッション、企業内研修なども行う。TEDxTalkスピーカー。