two red vehicle face each other at daytime

プレゼンターにとって最大の敵とは?

,

米国のプロフェッショナルスピーカー界で殿堂入りを果たしている大御所、パトリシア・フリップは、こう語っています。

「The enemy of the speaker is sameness」(スピーカーの敵は無変化)

 つまり、プレゼンテーションに何の変化も見られないと、聞いている人たちはすぐに飽きてしまうということです。演台の後ろに立ったまま、微動だにせず、表情も変わらず、同じ声のトーンでただただ話し続ける登壇者……。想像しただけでも疲れてしまいますね。そう、パトリシアが言っているように、プレゼンターにとっての最大の敵とは「無変化」なのです。

対面でのプレゼンであってもそうなのですから、特に昨今急激に増えてきているオンラインプレゼンの場合、「ながら参加」ができてしまう形式だと「無変化」が少しでも続けば、聞き手は一瞬にして興味を失って、携帯をいじる、メールチェックする、別の作業を始める、コーヒーを取りに行く、トイレに立つ……などなど、違うことを始めてしまうことでしょう。スピーカーにとっての最大の敵である「無変化」を作らないための5つのポイントをお話しします。

(1)ストーリーを語る

人は「プレゼンを聞いている」と思うとなかなか興味が引かれませんが「ストーリー」には心を揺らす力があります。といっても、何もダイナミックな映画のようなストーリーではありません。日常の中のささいな出来事から、プレゼンのトピックを端的に表すことのできるエピソードを選び、ストーリーとして語ってみましょう。壮大なストーリーをだらだらと話すよりも、ささいなストーリーを巧みに語る方が、聞き手は心が引かれて耳を傾けてくれます。いろいろな変化をつけてストーリーを巧みに語る方法は、6月に発刊した新著『ストーリーに落とし込め 世界のエリートは「自分のことば」で人を動かす』(フォレスト出版)をぜひご覧ください。

(2)参加型の箇所を設ける

先日の私のオンラインセミナーでは、冒頭からクイズ形式のプレゼンをしました。8問の問題に対し、「YES」か「NO」を答えてもらう形式です。対面なら「YESの人? NOの人?」と挙手を促しますが、Zoomを使うと「Poll」という機能が使えます。画面上に投票のポップアップ画面が現れ、投票すると、すぐに集計結果を見ることができます。聞き手参加型のインタラクティブなPollなら「聞く」「考える」「投票する」「投票結果を見る」「解説を聞く」というたくさんの「変化」を数分内に作り出すことができるので、参加者を飽きさせません。

このほか、チャットや挙手機能を使うことも考えられます。リアルの場だと、発言や質問に遠慮しがちな参加者もいます。でもオンラインなら、チャット機能を使えるので意見が言いやすくなり、アウトプットの機会が全員に平等に与えられます。さらに挙手機能を使うと、スピーカーにとっても、参加者の理解度を確認できるというメリットがあります。こうしてインタラクティブなやり取りや、意見の吸い上げなどを行うことで「参加している感」を与えることができ、スピーカー側だけでなく参加者側にも「動き」を促して「変化」をつけることができます。

(3)動画や画像を取り入れる

何かの事例を紹介したりコンセプトについて解説したりする際、ただ口頭で説明するのでは「無変化」の状態を作ってしまいます。特にオンラインの場合、画面上に動きがなくなるパターンが2種類あります。1つ目が、登壇者が着席の状態で話をするケース。まさに「演題の後ろで微動だにせず話している」のと同じ状態を作ってしまいます。もう1つは、同じスライドで長々と話してしまうケースです。スライドシェアをすると、スピーカーは小さな箱の中に見えていてスライドが大きく表示される状態になります。もし、ずっと同じスライドが出たまま話が続いていくと、やはり「無変化」の状態を作ってしまいます。

そこで、画面上に変化を持たせるためには、動画や画像を使うのが効果的です。ただし、画像の場合は、ストックフォトだと「見たことがある」感が出てしまい、さほど「変化」を出すことができません。ですので、自分が撮ったパーソナルな写真などを活用し、その時のエピソードなどを話しながら紹介すると、注目度が上がるでしょう。

(4)立って登壇、着席してQ&A

オンラインだと、みなさん登壇時は着席していることがほとんどだと思います。着席だと顔がよく見え、親近感を感じることができますが、動きが制限されるため、無変化の状態を作ってしまいます。

大事なオンラインプレゼンの時は、思い切って立ってみましょう。そうすると、ある程度のボディーランゲージが使えるようになり、物理的な変化を生み出すことができます。ただし、立つ位置に気をつけましょう。全身が映るようにすると遠すぎてしまうため、上半身がしっかり映るくらいの距離を保ちます。私がオンラインで登壇する際は、プレゼン箇所は立って行い、Q&Aでは着席するというように、ここでも変化を持たせる工夫をしています。

さらに、カメラが目線の高さに合うように、PCを高い位置に設置することもポイントです。PCをデスクに置いたままで立ってしまうと、カメラが下からあなたの顔を捉えることになり、あなたは聞き手を見下ろしているように映ってしまいます。私は「Raiser」といわれる、PCの位置を高くするフレームを使って位置調整をしています。辞書など分厚い本やクッキーの缶などを重ねてその上にPCを置くのでも十分だと思います。Q&Aで着席する時には、速やかにPCをデスクの高さに戻しましょう。

(5)登壇者以外にも話す人を登場させる

同じ人がずっと話をしていると、だんだんその人の声のトーンやペースに慣れてきてしまい、これも「無変化」につながる原因となります。

そこで、ファシリテーターやアシスタントのような役割の人を立てたり、ゲスト登壇者を立てたりして、メイン登壇者とは違う人が登場することで、場に変化をつけることができます。複数の人が交代でプレゼンをしてもよいでしょうし、二人の対談形式というのも考えられます。もしプレゼンターは一人である必要がある場合は、プレゼンテーションの部分を短くし、質疑応答に移ってインタラクティブさを演出するという方法もよいでしょう。その場合、ファシリテーターを立てて参加者からの質問を管理してもらい、ファシリテーターとプレゼンターの間で質疑応答を行うという形式だと、質問の内容や方向性、時間などを管理しやすく、お勧めです。

以上の5つのコツは、もちろん対面時にも使える技ですので、ぜひオンライン、オフラインを問わずに実践してみてください。

投稿者プロフィール

リップシャッツ 信元 夏代
リップシャッツ 信元 夏代(りっぷしゃっつ・のぶもと・なつよ)
早稲田大学商学部卒。ゼミ専攻は「異文化コミュニケーションとビジネス」。NYUにてMBA取得。1995年に渡米後、伊藤忠インターナショナルにて鉄鋼、紙パルプ業界の営業・事業開発に携わる。その後マッキンゼーにて消費財マーケティング・事業プロセス改革などの業務に携わった後、2004年に、事業戦略コンサルティング会社のアスパイア・インテリジェンス社を設立。
 2013年、2014年春季トーストマスターズインターナショナルの国際スピーチコンテストでは、日本人初の地区大会優勝2連覇を果たしている。この経験を受け、2014年9月にブレイクスルー・スピーキングを設立。グローバルに活躍したい日本人のためのグローバルパブリックスピーキングのE-learningプログラムを中心に、個人コーチングセッション、企業内研修なども行う。TEDxTalkスピーカー。