「高コンテクスト」な日本語の特性を知り、異文化の相手に適応させて伝える

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世界に羽ばたくグローバルリーダーを目指す皆さんなら、異文化の人々に対して「話をする(=スピーチ)」という機会が必ずあるはず。その相手が少数の現地社内スタッフでも、現地大手企業の交渉相手でも、あるいは不特定多数の大勢の聴衆だったとしても、異文化圏の相手の心をいかにして鷲づかみにし、スピーチの間じゅう、彼らの心を捉え続けられるかがスピーチの肝であり、醍醐味でもあります。

前回、オープニングの7秒で印象が決まるため、冒頭からインパクトを出すために様々な手法があることをお話しました。今回は、異文化ビジネスの事業コンサルタントならではの視点から、スピーチ教室でも英語学校でも教えてくれない「異文化圏の相手」への話し方のコツについてお話します。

異文化の人々へのスピーチでは、メッセージの低コンテクスト化が必要

アメリカの文化人類学者、エドワード・ホールによる、「高コンテクスト」「低コンテクスト」というモデルを簡単にご紹介しましょう。「高コンテクスト」とは、実際に言葉として表現された内容よりも、わざわざ言葉にしなくとも相手に理解される(理解したと思われる)内容のほうが豊かなコミュニケーションアプローチで、日本語はその最極端な例とされています。非言語メッセージに頼るコミュニケーション方法を取ることから、「高コンテクスト」なコミュニケーションを取る文化は、「察しの文化」などとも表現されます。

一方で「低コンテクスト」とは、言葉に表現された内容のみが情報としての意味を持ち、言葉にしていない内容は伝わらないと考えられるコミュニケーションアプローチで、最極端な例にはドイツ語が挙げられています。「察しの文化」に対し、こちらは「言葉の文化」と表現されます。アメリカも非常に「低コンテクスト」な文化圏である、と考えられています。

例えば日本人なら頻繁に聞くことの多い、「それは難しいです」という表現。日本人なら、「つまりNoということなんだな」とすぐに理解することが出来るでしょう。しかしそれを非日本人に対して「It’s difficult」と伝えたらどうでしょう。「低コンテクスト」な文化圏の人ならば言葉通りに受け取りますから、「Difficultということはチャレンジングなのだな。ではボトルネックを解消すれば実現可能なんだな。きっとこれが実現できたら自分の評価は上がるはず!やってみよう!」と、本来の意図とは正反対の捉え方がされるかもしれません。

前述のとおり、日本は高コンテクストの度合いが最も高い文化圏にあります。つまり、日本人が異文化の人々に対してスピーチをする際、どの国の人であっても、コンテクストの違いが必ずや発生するために、高コンテクストなままの「日本的」メッセージでスピーチ原稿を作ってしまうと、意図が明確に伝わらないだけでなく、誤解を生んだり信頼を損ねたりすることすらある、ということなのです。これは日本人特有の異文化コミュニケーション上の課題である、とも言えます。

ですから、日本人としては、極力低コンテクスト化したメッセージに落とし込むことを心がけることが大切です。つまり、「それは難しいです」ならば、「現時点ではリソースが不足しているため、その案を採用することは出来ません」のように、論理的に理由を述べた上で、直接的なメッセージを提示することです。

日本人相手にも応用できる異文化コミュニケーション

筆者はアメリカ在住暦20年目に突入しますが、これまで実に沢山の異文化コミュニケーション上の失敗を経験してきました。それ故に沢山学びの機会があり、今に至るわけですが、過去の痛い失敗は実は、アメリカ人相手ではなかったのです。日本人相手の失敗ケースの方がはるかに多発していました。

異文化コミュニケーションのコツを、あえて一言でまとめるとすると、「適応」です。自分の普段のコミュニケーション手法を、相手によっていかにフレキシブルに適応させることができるか、ということです。それは自身の核となるフィロソフィーや信念、意見は変えずに、伝え方を様々に変化させ、相手に最も響く伝え方へと適応させることで、相手の心は動き、説得され、共感してくれるのです。

上記で、日本は高コンテクストの度合いが最も高い文化圏であるため、異文化の人々に対しては低コンテクスト化することが大切、と述べましたが、筆者は高コンテクスト⇒低コンテクスト、という適応の仕方を頻繁にしていたために、低コンテクスト⇒高コンテクストへ戻す適応が、ごっそり抜け落ちてしまった時期があったのです。

例えば、戦略コンサルタントとして日本人のクライアントにある提案をした際、低コンテクストに、つまり直接的かつ明瞭簡潔に、論理的思考で説得しようとした際、非常に高コンテクストだった日本人クライアントにとっては圧迫感を感じるコミュニケーション方法となってしまったのです。その結果、その日本人クライアントは、「自分のこれまでの経験を尊重されてない」、「顔が潰された」、「外部からそんなことを言われる筋合いはない」、と感じてしまい、筆者はクライアントから大きな怒りを食らう結果となってしまったことがありました。

同じ日本人同士だったとしても、置かれてきた環境や価値観は大きく異なります。つまり、「異文化」を考える際、最終的に行き着くのは、国と国の文化の違いではなく、個人と個人の文化の違い、ということなのです。ですから、誰かと話をする(=スピーチ)ということは、必ず、自分の普段の伝え方を「適応」させる必要があるため、異文化コミュニケーションの理論を踏まえたスピーチ技術は、実は対日本人にも非常に有効な手法だといえます

2015年1月から開講するブレイクスルー・スピーキングは、異文化コミュニケーション理論を踏まえ、伝え方を適応させながら、人々の心を動かすスピーチを最短3ヶ月で習得することが出来るというブレイクスルー・メソッドが特徴です。

まずは人前で話すことに慣れたい方も、スティーブジョブズのように世界中の人にWOW!といわせるスピーチを目指す方も、世界のトップビジネスマンが集結する最先端の地、ニューヨークから毎週LIVEで発信されるインターアクティブ学習、ブレイクスルー・スピーキングのウェビナーコースを覗いてみてはいかがでしょうか?

投稿者プロフィール

リップシャッツ 信元 夏代
リップシャッツ 信元 夏代(りっぷしゃっつ・のぶもと・なつよ)
早稲田大学商学部卒。ゼミ専攻は「異文化コミュニケーションとビジネス」。NYUにてMBA取得。1995年に渡米後、伊藤忠インターナショナルにて鉄鋼、紙パルプ業界の営業・事業開発に携わる。その後マッキンゼーにて消費財マーケティング・事業プロセス改革などの業務に携わった後、2004年に、事業戦略コンサルティング会社のアスパイア・インテリジェンス社を設立。
 2013年、2014年春季トーストマスターズインターナショナルの国際スピーチコンテストでは、日本人初の地区大会優勝2連覇を果たしている。この経験を受け、2014年9月にブレイクスルー・スピーキングを設立。グローバルに活躍したい日本人のためのグローバルパブリックスピーキングのE-learningプログラムを中心に、個人コーチングセッション、企業内研修なども行う。TEDxTalkスピーカー。