優れたプレゼンテーターは想像を絶するほどの練習をこなす

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A Happy New Year!

昨年の新年号では、「Will Do List」のお話しをしていました。Will Do List とは、New Year’s Resolutionとして、「今年は必ずこれをやります」、「今年の終わりにはこれができています」という覚悟表明、という意図をこめた、「やることリスト」です。私は、今年達成したい目標に優先順位をつけたものを書き出し、机のいつも見える位置に貼っています。

比較的簡単に実現できそうなものから、かなり非現実的だけれどもぜひかなえたい、というものまでいろいろなレベル感のものがありますが、今年も12のWill Do Listを書き出しました。そのうちのひとつを早速実行開始しました。何かというと、「Acting classを受ける」です。いえいえ、いまさら役者を目指すわけではありません!スピーチに役立てるためです。

原稿は丸覚えすべきか?!

私自身もまだまだ課題として認識しており、そしてよく受講生からも聞かれるのが、「スピーチをする時、原稿を丸覚えすべきだろうか?」という悩みです。皆さんはスピーチの時、どう準備していますか?

方法は2つあると思います。1つ目は、オープニング&クロージング、そして全体の流れとメインポイントのみを頭に叩き込んで暗記し、あとは適宜フレキシブル進めていく…と言う方法。2つ目は、一字一句暗記してしまう方法。

筆者はどうしているか、というと、仕事でのワークショップやセミナー時は1つ目の方法、スピーチコンテストやTEDに登壇した際には2つ目(丸暗記)の方法、です。一般に、1つ目の方法の方が良いといわれていますが、双方、よしあしがあるでしょう。

1つ目の方法だと、内容をしっかり熟知していれば問題なく、自然な口調でスピーチできるのですが、万が一、頭が内容を忘れてしまったら焦ります。2つ目の方法だと、段取りがすべて分かっているので安心ではありますが、どうしても、「覚えてきました」感満載になってしまい、聞き手にもそれは伝わってしまいます。

口が勝手に動くほど…

ふと、役者さんたちがどうやっているのだろう、と気になりました。役者さんたちはセリフが決められています。動きもある程度の想定があることでしょう。彼らはセリフを徹底的に暗記しているはずです。しかし「覚えてきました」感なんて微塵も見えません。何をどう練習したらそのようにできるのでしょうか?それが知りたくて、Acting Classを取り始めた、というわけです。

早速質問してみました。すると返ってきた答えは単純でした。
「想像を絶するほどの練習量だよ」
いやいや、練習なら私もたくさんしているつもりです。それでも、役者のような自然さを出すのはなかなか困難です。どれくらい練習してるの?と聞かれ、堂々とこう答えました。
「昨年のスピーチコンテストでは、私は鏡に向かって毎晩1〜2回練習する日々を1カ月間続けた!」
するとなんと、「そんな少ないのはお話にならない」と言わんばかりに、フッと笑われてしまいました。

役者さんたちは、とにかく信じられないくらいの練習量でセリフを叩き込むのだそうです。1日のうちに何回も何回も。ベッドの中でも電車の中でも、レストランの中でも。セリフを暗記する際、まずは台本をある程度読み進め、今度は台本を見ずに1フレーズ言い、また台本に戻って最初からその次のフレーズまで言い、台本から目を離してそこまでを口に出して練習し、また台本に目を戻してその先のフレーズを確認し…というのをひたすら続けるのだそうです。

口の筋肉が勝手に動いてセリフをしゃべってくれるようになるほど叩き込んだからこそ、その時々の状況で、言い方を変えたり、アドリブを効かせたりできるのだそうです。つまり、何を言うか、WHATは完璧に覚えておくが、どう言うか、HOWはやるたびごとに違う、とのこと。

1000回の練習ができるか?

そういえば役者さんだけではありません。優れたプレゼンテーターといわれる各界の人々も同様なのです。

例えばTEDスピーカーのひとりで、350万View数以上の人気スピーチを行った、ドクター・ジル・ボルトテイラーも、18分のスピーチに向けて200回ものリハーサルを行ったそうです。18分で200回。スピーチが長くなれば、リハーサルの回数も増やす必要があるでしょう。あえて単純計算するならば、1分につき、約11回の練習をする計算になります。もしみなさんが、3分間のスピーチをするならば、33回の練習です。1時間のスピーチなら、660回です。

かの有名なSteve Jobsも同様です、プレゼン前に信じられないほどの数のリハーサルを重ねたそうです。自然にその場で思いついたような語り口は、実は緻密に設計され、何百回と繰り返された練習の賜物なのですね。

現在、グローバル日系企業のトップの方々にスピーチのアドバイスをさせていただく機会も多いのですが、何千人もの観客を前にした年間最大のプレゼンの場でさえ、原稿があがるのが(しかも他部署が書いた原稿)1~2週間前、練習は、片手で数えられる程度にすぎない、というのを伺って愕然としました。およそ1時間半のプレゼンです。上記の計算ならば、約1000回の練習をしていなければならないはずです。

スピーチに限らず、何かに卓越するには、想像を絶するような地道な努力、そしてそれを絶対にやる!という覚悟が必要なのだと思います。みなさんの覚悟はいかほどでしょうか?

投稿者プロフィール

リップシャッツ 信元 夏代
リップシャッツ 信元 夏代(りっぷしゃっつ・のぶもと・なつよ)
早稲田大学商学部卒。ゼミ専攻は「異文化コミュニケーションとビジネス」。NYUにてMBA取得。1995年に渡米後、伊藤忠インターナショナルにて鉄鋼、紙パルプ業界の営業・事業開発に携わる。その後マッキンゼーにて消費財マーケティング・事業プロセス改革などの業務に携わった後、2004年に、事業戦略コンサルティング会社のアスパイア・インテリジェンス社を設立。
 2013年、2014年春季トーストマスターズインターナショナルの国際スピーチコンテストでは、日本人初の地区大会優勝2連覇を果たしている。この経験を受け、2014年9月にブレイクスルー・スピーキングを設立。グローバルに活躍したい日本人のためのグローバルパブリックスピーキングのE-learningプログラムを中心に、個人コーチングセッション、企業内研修なども行う。TEDxTalkスピーカー。