スピーチのネタを見つける2種類のアプローチ

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今年もまた、国際スピーチコンテストのシーズンがやってきました。

2013年から毎年出場していますが、実は今年は迷いに迷い、3種類の全く異なるスピーチ原稿を書いてしまい、第一ラウンド直前までどれにするか迷ってしまいました。筆者自身は、なかなか決められず非常に困っていたのですが、友人からは「どうやったらそんなにスピーチのネタが次々と出てくるのか?」と感心されてしまいました。

そこで今回はネタ探し、について書いてみようと思います。これは何も、スピーチコンテストに限らず、ビジネス上のプレゼンにも共通するコツなのです。

自分の経験や伝えたいメッセージからストーリーを展開する

スピーチのネタ自体は、あらゆるところに転がっています。普段の通勤電車の中、子供とのなんのことないやりとり、買い物をしていたときにふと気づいたこと、レストランで人を観察したとき、仕事でのちょっとした出来事、誰かが発した一言、本などを読んでいて得た気づき…、などです。

ネタの種を見つけるには、2つの方向性があります。一つ目は、自分が経験した出来事を種にし、そこからメインポイントへとつなげていく、という方向性です。

何か特別な状況下での出来事でなくてよいのです。例えば、幼い子供とのやり取りの中で、子供が全く言うことを聞かず、キレて怒鳴った後、悪かったと思って子供と目線を合わせて穏やかに話をしなおした、としましょう。よくある状況ですよね?でもこの普通の出来事を、一歩離れて観察してみましょう。この出来事からどんなメッセージが伝えられるでしょうか?何か小さくてもよいので学びはないでしょうか? 「子供と目線を合わせることが大切だと学んだ」「自分の感情コントロールは難しいがチャレンジせねばと誓った」「どんなに小さい子供でもしっかり向かい合えばちゃんと理解できるのだと気づいた」などなど、いろいろなメッセージに結び付けられるのです。その出来事を通してどんなメッセージを伝えるのが最も聞き手の心に響くだろうか、と考えながら、メインメッセージを一つに絞り込んでいきます。

その出来事を種に、伝えたいメインメッセージが定まったら、今度はそれをストーリーとして広げ、効果的な構成を考え、印象に残る仕掛けを組み込み、スピーチとして組み立ていくのです(効果的なスピーチの構成手法については、ブレイクスルーのウェビナー講座をご参照ください)。

2つ目は、伝えたいメッセージを種にし、そこからストーリーへと広げていく、という方向性です。時には、これを伝えたい!ということが先に思い浮かぶこともあります。例えば「何かに成功したければポジティブ思考が必要だ」「健康のためにはダイエットと運動の両方が必要だ」「自分の状況を変えたければ自分が変わらなければいけないのだ」「チャンスを見逃すな!」などなど。メインポイントがしっかり定まったら、次にすべきは、それを伝えるために最適なストーリー探しです。過去の自分自身の様々な経験を洗いざらい書き出していき、メインポイントや、そのサポートとなるサブポイントなどが引き出せるか、照らし合わせていきます。そして、ストーリーに必要な「9つのC」を組み込みながら、ドラマを描いていくのです(この連載の「ストーリーをドラマにする9つのC」をご参照ください)。

ビジネスプレゼンではメインポイントからストーリーを考える

ビジネス上ではほとんどの場合、上述の二つ目の方向から入るケースではないかと思います。つまり、ビジネスプレゼンではほとんどの場合、目的がはっきりしています。「新商品を買ってもらいたい」「株主からの信頼を得たい」「企業イメージを向上させたい」などなど。

たとえばメインポイントが「新商品を買ってもらいたい」のならば、その新商品を使う人々の姿をストーリーとして描き、この商品によっていかにその人々の生活が向上したのかを伝えてみましょう。「株主からの信頼」ならば、あなたの会社が、大変な苦境にあってもまい進し続け信頼を勝ち得た事例をストーリーとして共有してみましょう。「企業イメージ」ならば、あなたの会社が、社会やビジネスに日々貢献している姿をストーリーに乗せて具体的に表現してみましょう。

1999年のトーストマスターズ国際スピーチコンテスト世界大会優勝者である、クレイグ・バレンタイン氏は常々このように言っています:
“The only purpose of any speech is to tell a story and make a point.”
つまり、スピーチやプレゼンの唯一の目的は「ストーリーを語ってポイントを伝える」ことだ、ということです。それがビジネスの場であれ、コンテストの場であれ、なんら変わりません。人は、ストーリーを通して共感し、納得するものです。そして、そのストーリーから明確かつユニークなポイントが伝わってくれば、それは人の心に必ず刺さり、行動喚起や意識変革につながっていくものです。

もしみなさんが、これからスピーチやプレゼンの準備をしようとするならば、まずは「明確かつユニークなメインポイント」と「ストーリー」を考えることから始めてみてください。

投稿者プロフィール

リップシャッツ 信元 夏代
リップシャッツ 信元 夏代(りっぷしゃっつ・のぶもと・なつよ)
早稲田大学商学部卒。ゼミ専攻は「異文化コミュニケーションとビジネス」。NYUにてMBA取得。1995年に渡米後、伊藤忠インターナショナルにて鉄鋼、紙パルプ業界の営業・事業開発に携わる。その後マッキンゼーにて消費財マーケティング・事業プロセス改革などの業務に携わった後、2004年に、事業戦略コンサルティング会社のアスパイア・インテリジェンス社を設立。
 2013年、2014年春季トーストマスターズインターナショナルの国際スピーチコンテストでは、日本人初の地区大会優勝2連覇を果たしている。この経験を受け、2014年9月にブレイクスルー・スピーキングを設立。グローバルに活躍したい日本人のためのグローバルパブリックスピーキングのE-learningプログラムを中心に、個人コーチングセッション、企業内研修なども行う。TEDxTalkスピーカー。