パブリックスピーキング界の大御所、Patricia Frippは次のように言っています:
“People resist sales presentation. But nobody can resist a good story…well told.A trivial story well told is much more memorable than a great story poorly told. ”― Patricia Fripp
「TEDとか、モチベーショナルな性質のスピーチならよいだろうが、ビジネスの場では、ストーリーテリングは目的にそぐわないのでは?」という疑問がよく聞かれますが、Patriciaははっきり「That’s a big big mistake」と答えています。
「何かを売り込まれている」と少しでも感じると、人は抵抗を感じたりしますが、豊かなストーリーには誰もがつい耳を傾けてしまう力があります。それは何も、複雑で巧妙なストーリーでなくてよいのです。シンプルながら、効果的に語られたストーリーには、人は心を動かされるものなのです。
ビジネスプレゼンの中のストーリーは、様々な役割を担ってくれます。
込み入ったコンセプトや新しい知識を得た時、ストーリーと共に解説されると、より理解が進み、腹落ちしやすくなります。
商品・サービスの購入を検討しようとしている時、実際それをどんなシーンで使ったらどのように現状が改善されるのか、ストーリーならよりイメージがわきやすくなります。
上司から言われて仕方なく参加した研修でも、講師が自身の失敗談など、ストーリーを語ると、興味が持てるようになります。 過去のケースを紹介する際、そのプロジェクトに関わった人々の顔が見え、どんな苦労を経て今に至るか、ストーリーで聞くことができれば、より、「この会社に頼みたい」と心が惹かれます。
ビジネスプレゼンでは、ついつい「事例紹介」にとどまってしまうパターンがほとんどではないでしょうか。
事実(クライアントの課題やプロジェクト背景説明、提供したソリューション、得られた結果)を明確に説明すれば、論理的なので説得力があると思いがちですが、実は論理だけでは人の心は動きません。
アリストテレスが「説得の3要素」として挙げているように、論理的アピール、倫理的アピール、そして情緒的アピールの3要素がそろって初めて、人は完全に説得されるのです。
倫理的アピールは、自社の評判や実績、ブランド力などである程度補えますが、ビジネスプレゼンには、情緒アピールが欠如しているケースが多々あります。それを補ってくれるのが、「ストーリー」です。
単なる事実を脱して、わが社のストーリー、つまり「コーポレートストーリー」にしなければ、人は心から説得されないのです。
コーポレートストーリーは3つのCに注目
ストーリーを構築する際、「9つのC」という要素を組み込んでいく手法は、「ストーリーをドラマにする9つのC」で解説しているとおりですが、ビジネスプレゼンで使用する「コーポレートストーリー」には、ハリウッド映画のようなドラマチックさは、確かに少々邪魔になってしまいます。
コーポレートストーリーを構築する際は、この9つのCの中から、「Conflict」、「Cure」、「Change」の3つのCにフォーカスして構築していくと効果的です。
通常、「事例紹介」は下記のようなイメージで説明されます:
◆課題:各種サービスが複雑化しており、俊敏かつ柔軟な情報基盤を作ることが必須
◆ソリューション:
□複雑化する各種サービスを見える化することで、事業プロセスの効率化、資産を削減
◆成果:
□わが社の商品、「Business Flowchart」を導入することで、資産1/4へ
□大規模プログラムの開発期間を約30% 短縮し、かつ高品質な開発を実現
ここに欠けているのは、「Conflict」「Cure」「Change」のうちどれでしょうか?
「Cure」はわが社の商品、Business Flowchartです。この商品がきっかけとなり、資産と開発期間の削減という「Change」を実現しました。この2つのCは通常、「事例紹介」に含まれています。しかし決定的に欠けているのは、「Conflict」です。
「Conflict」とは、欠点や欠陥、という意味ではありません。
ソリューションを提供するにあたり、必ず、なんらかの苦労があったはずです。そして、プレゼンの聞き手の企業でも、もし同商品の導入を決定したら、少なからず、なんらかの障害が必ず出てくるはずです。
この事例のA社では、どんな障害があったのでしょうか。どんな点に苦労したのでしょうか。どんな人たちがどのような思いでそれに取り組んでいったのでしょうか。その障害を共に越えようとしたことで、クライアントとわが社の合同チームが一体感を感じるきっかけになったということはありましたか? 誰かがふと発した一言から、ひらめきがあったりしなかったでしょうか?
例えば、上記の「事例」に「Conflict」を加えてみると、こんなに豊かで、「ヒトの顔が見える」ストーリーになるのです。
皆さんの企業では、市場の先を読みながら多様なサービスを迅速に展開しているのに、少々伸び悩んでいる、という課題はお持ちではないでしょうか。
昨年秋、A社のトップ営業マン、山田さんと、業界コンベンションで1年ぶりにばったりお会いした時のことです。久しぶりだったので、コンベンションセンターのスターバックスでコーヒーをご一緒しながら情報交換することにしました。
私は山田さんにこう言いました。
「A社はここ数年、新サービス導入のスピードが速くて素晴らしいですね。市場の先をいっていらっしゃる」
すると山田さんは、意外にも表情が曇って、コーヒーを飲む手を休めてこうおっしゃいました。
「いや実は、新サービスが増えすぎて複雑になってしまって、売り上げは上がっている一方で、資産もどんどん増えてしまって……」
「なるほど、山田さん、例えば複雑になったサービスが、ひと目で把握できれば、もっとシンプルにマネージできますね?」
その時私は、わが社の「Business Flowchart」がA社の悩みを救う、と確信しました。
「Business Flowchart」は、事業プロセスを見える化することによって、今どのプロジェクトがどの段階にあるのかをひと目で分かるようにするシステムです。そうすると、これまでプロジェクトごとに別々のシステムで独自管理していた状態から中央集権化できるので、不必要な資産は大幅に削減できます。
コンベンションから戻った山田さんは早速社内でプロジェクトを立ち上げ、わが社の「Business Flowchart」導入に取り組みました。
▼▼▼Conflict挿入▼▼▼
しかし事業プロセスの異なるサービスはなんと100種類を超えていて、これらのプロセスを全て「Business Flowchart」に落とし込むのは途方に暮れるような作業量でした。しかし、それぞれ専門性を持つわが社のプロフェッショナル5名が、A社の担当者と毎日肩を並べて、一つ一つ「Business Flowchart」に落とし込む作業を地道に進めました。
途中、担当者の出張で日程がずれ込んだり、毎日顔をつき合わせるのを快く思わない方もいたりしましたが、「お客様と共に」という姿勢を徹底するわれわれプロフェッショナルチームは約6カ月かけて作業を完了させました。
▲▲▲Conflict終了▲▲▲「Business Flowchart」を導入したことでA社は資産1/4への削減を達成しました。さらに、情報を把握しやすくなったために高品質なプログラム開発が実現したうえに、事業プロセスの効率が高くなり、開発期間も30%短縮できるようになりました。
つい先日、再度山田さんとお会いしたところ、こんなうれしい一言をおっしゃってくださいました。
「おかげさまで私の営業の成績も順調です!」
わが社の「Business Flowchart」は、皆さまの会社の生産性を、資産効率良く、大きく改善することができます。
そしてわれわれの専門性の高いプロフェッショナルが、皆さまの会社の課題にパーソナルに取り組み、やり遂げます。
まさに、技術とヒトが一体となって、皆さまの成長のお手伝いをします。
次は皆さんの番です
いかがでしょうか。形式ばって簡素な「事例紹介」を、「コーポレートストーリー」として語ることで、興味を持って聞くことができませんか?
上記の例には、9つのCの中から、コーポレートストーリーのポイントとなる3つのC「Conflict」「Cure」「Change」を中心に、「Circumstance」「Curiosity」「Conversation in Dialogues」「Carryout」なども含まれています。
■9つのCをおさらいする→「ストーリーをドラマにする9つのC」
皆さんが普段のプレゼンで行っている「事例紹介」を、ぜひ、「コーポレートストーリー」に仕立ててみてください。聞き手の共感度が一気に高まることでしょう。