ビジネスは、毎日が問題解決の連続です。大なり小なり、ありとあらゆる所から降りかかってくる問題に対し、ビジネスパーソンは瞬時に判断を下し、前進していかなければなりません。しかし、経営について勉強したり、業務経験を積んだだけでは、「知識」や「勘」は身についても、「真の思考力」はなかなか身につかないものです。「真の思考力」とは「知識」や「勘」を上手に活用しながら、本質的な問題を探り当て、それを解決していくための「スキル」であるからです。

本コラムでは、戦略コンサルタントが日々活用しているロジカル・シンキング手法を基礎から紹介します。ロジカル・シンキング力を鍛えるための頭の体操や、アメリカを中心に起こっている出来事をケースとして取り上げながら、読者のロジカル・シンキング力を刺激していきます。

フレームワークの活用で効率的な分析を

前回のコラムの最後で触れましたが、情報の収集、整理、分析・検証を行う際、いくつかの適切なフレームワークを活用すると、ロジカルかつ効率よく仮説検証を進めることができます。今回は、仮説検証のプロセスにおいて役に立つ、コンサルタントの武器ともいえるさまざまなフレームワークをご紹介します。

有名なフレームワークはビジネスパーソンにとって「共通言語」の役割を担ってくれ、組織内の意思決定やコミュニケーションを円滑、かつ迅速にしてくれるものです。フレームワークを上手に使うと、仮説検証、分析、プレゼンテーションなどをより高いレベルで効率的に行うことができます。ただし、フレームワークにはそれぞれに目的や特性がありますから、万能薬ではなく、目的にあったフレームワークを使うことが重要である、ということをここで強調したいと思います。

また、フレームワークで分析する際には、字面(じづら)だけで考えるのではなく、頭の中に具体的なイメージを浮かべるとよいでしょう。ビジネスは論理で人を納得させることが必要であると同時に、結局は心理的に人を説得し、動かしてこそ価値がありますから、「ロジック&イマジネーション」を大事にすることです。そして、フレームワークを作った、埋めたことで満足しないように心がけましょう。ロジカルシンキングの大きな目的は、説得力のある結論をスピーディーに出すことであり、フレームワークは単にその助けである、ということを忘れてはなりません。

従って、「なんのためにこのフレームワークを作っているのか」「ここから何を伝えたいのか」ということを、頭の片隅で常に意識しながら活用していくようにしましょう。

3つのC

まずは、3つのCと呼ばれるフレームワークをご紹介します。

3C分析は、企業の事業環境分析や企画立案において定番とされる手法です。ビジネスを市場・顧客(Customer)、競合(Competitor)、自社(Company)という3つの異なる視点から見ることで、そのビジネスにおける課題や成功要因を見つけ出し、これからの戦略を考えることが狙いです。

このフレームワークは、市場・顧客(Customer)、競合(Competitor)、自社(Company)という項目のバランスがよく、MECEにビジネスの全体像を大まかに把握することができます。それぞれのCについて、次のような項目を検討していきます。

自社(Company)
自社の経営資源や企業活動について、現状はどうなっているか?強み、弱みは何か?

  • 経営資源(生産能力、従業員数など)
  • 業績(売上高、利益、キャッシュフロー、市場シェアなど)
  • 戦略(集中戦略、差別化戦略など)
  • ブランドイメージ
  • 品質、技術力、販売力
  • 組織力

競合(Competitor)
「自社にとっての競合はどこか?」を明確にした上で、自社分析と同様、現状、強み、弱み、経営資源、業績、戦略などを分析。そのほかの検討項目としては下記などがあります

  • 寡占度(競合の数)
  • 参入障壁や価格競争の有無

市場・顧客(Customer)
自社の製品やサービスに対し、市場の反応を分析

  • 購買人口(潜在顧客はどの程度か?)
  • 市場規模、成長性(現在の市場規模や今後の成長の見通しは?)
  • セグメント(市場はどのようなセグメントに分けられているか?)
  • ニーズ(そのセグメント内でのニーズは何か?)
  • 業界構造(業界の構造的特徴は?詳細は後述するファイブフォースを参照)
  • 購買意思決定までのプロセス(どの程度競合と比べ、どのくらい時間をかけて購買に至るか?)
  • 購買決定者(購買の意思決定者は誰か?)
  • 購買行動に影響を及ぼす要因(価格、ブランド、デザイン、品質…)

4つのP

4つのPは、マーケティング・ミックスの構成を製品(Product)、価格(Price)、プロモーション(Promotion)、流通(Place)の4つの組み合わせに分けて整理することが狙いです。1961年にアメリカのマーケティング学者、ジェローム・マッカーシーが提唱して以来、マーケティング戦略設計の際に広く使われているフレームワークです。特に売り手側から見て、「ターゲットとなる顧客市場から期待する反応を引き出すための要素は何か?」を分析するのに優れています。

なお、フィリップ・コトラーは『コトラーのプロフェッショナル・サービス・マーケティング』(ピアソン・エデュケーション刊)の中で、プロフェッショナル・サービスのマーケティング・ミックスとして、物的証拠(Physical evidence)、プロセス(Process)、人(People)を加えた7Pを提唱しています。

ファイブフォース (5 Forces)

ファイブフォースとは、業界に影響する5つの力から、「その業界がどういう特徴を持っているか」「どの程度儲かるか」「どの程度投資がかかりそうか」など、業界の収益構造や競争におけるキーポイントを判断するためのフレームワークです。経営資源の優先投入先、新規市場参入の可否、業界の魅力度の検討、事業撤退の検討などの際に役立ちます。

5つの力とは、次のものを指します。

  1. 新規参入の脅威
    新規参入は競合他社の増加に繋がり、新規参入が容易な業界は収益性の低下を招き、新規参入が難しい業界は、既存企業に有利に働く
  2. 代替品の脅威
    自社製品よりも対比要綱か(対費用効果??)で優れた製品や、従来機能を異なる媒体で代替できると、自社の競争力低下に繋がる
  3. 買い手の交渉力
    製品の差別化が難しかったり、買い手の情報量が多い場合、買い手の交渉力が強くなる
  4. 売り手の交渉力
    少数企業により業界を寡占していたり、企業特有の技術や特許によって権利を保護された製品を持つ場合、売り手の交渉力が強くなる
  5. 業界競合他社
    業界内の競合状況が激しいほど、業界の魅力度は小さくなる。激しい競争は、利益率の低下はもちろん、稼働率を上げて業績を上げようという傾向により、総資産回転率(売上高/総資産)や有形固定資産回転率(売上高/有形固定資産)が高くなることがある

プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント(PPM)

プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント(PPM)は、自社事業の全体感をつかみ、どの製品事業にどのような投資を行う必要があるのかを見極めることが狙いで、規模の経済性が働く事業における事業戦略の方向性を考える上で有効なフレームワークです。

下記のように、縦軸に市場成長率、横軸に相対マーケットシェアをとってマトリクスをつくり、事業を4つの象限に分類します。

今回のコラムでご紹介したフレームワークには、3、4、5などの数字が多いことにお気づきかと思います。物事を分析する場合、3つ~5つの要素に分解して考えるのが人間の脳には最もわかりやすいといわれています。特にこれらのフレームワークは、初期段階の分析に効果的でしょう。

次回のコラムでは、もう少し踏み込んだ、複雑な分析を行う際のフレームワークをいくつかご紹介します。

[/av_textblock]