2016年最後の号となりました。1年の締めくくりとして、「スピーチの締めくくり」を効果的に行う方法についてお話しします。

リーセンシー効果を利用するクロージングが重要

人は、一番最後に聞いたことを最も覚えている、といわれます。これをリーセンシー効果と呼びます。1つの文の中であれば一番最後の単語を、そしてスピーチであれば最後のクロージングで述べたことが最も印象強く残るのです。

今年のアメリカ大統領選挙中の民主党大会でビル・クリントンが行ったスピーチを例に挙げると、このような一文がありました。
「In the spring of 1971, I met a girl.」
しかし通常はこのような語順が自然です。
「I met a girl in the spring of 1971.」
しかし後者の語順だと、最後にきている単語、つまり1971年という年に何か重要な意味がある、と受け取られ、「Girl」は誰か分からない女の子、となってしまいますが、語順を前者のように変えただけで、「Girl」が重要であると感じられ、つまりその「Girl」とは、ヒラリー・クリントンのことだ、と聴衆はすぐに分かるのです。実際この一文を言っただけで、聴衆からは大きな拍手と歓声が沸き起こりました。

一文のなかでもこれほど最後の単語が重要なのですから、スピーチの最後に伝えるメッセージはいかに大切な意味を成すか、お分かりかと思います。どんなにすばらしい内容のスピーチだったとしても、もし最後のクロージングが弱かったとしたら、聞き手はあなたのスピーチがあまり素晴らしいものではなかった、という印象を持って会場を後にしてしまうことでしょう。

ではスピーチのクロージングに強いインパクトを持たせるには、どのようにしたらよいのでしょうか。4つのコツをお伝えします。

その1:シグナルを出す

クロージングに入る前に、そろそろ終わりにきているというシグナルを出してあげましょう。しかしインパクトを出すためには、単に、「In conclusion」や、「In summary」、などというのではなく、もう少しクリエイティブな表現が必要です。たとえば、「Let’s wrap things up」、「As we come to the end of the road」などです。

なぜそのままクロージングに入るのではなく、わざわざシグナルを出すべきなのか。それは、聞き手の集中力が上がるからです。そろそろ終わりだ、と分かった時、人は「これから大事なメッセージが語られる」、または「大事なまとめが行われる」と感じ、アンテナを立てて聞くようになるものなのです。

その2:コールバックでポイントを思い出してもらう

コールバックとは、前に話した内容などを「呼び戻す(コールバック)」ことです。つまり、スピーチを通して伝えてきた大事なメッセージを再度簡潔にまとめ、聞き手に思い出させます。そうすることで、重要なポイントをしっかりと聞き手の頭の中に焼き付けることができます。

その3:Q&Aを一番最後に入れない

もしQ&Aの時間があるならば、コールバックの後に入れましょう。決して一番最後に入れてはいけません。最後から1つ手前の段階です。

その理由? すでにお話しした通り、リーセンシー効果です。Q&Aでは、メインポイントではなかった箇所や、聞き逃した詳細、あるいはスピーチの内容から派生したテーマなどについて質問する聴衆などもいます。もしQ&Aで終わってしまった場合、しっかり伝えたいメインポイントではないメッセージが聞き手の頭の中に印象づけられて終了してしまいます。ですから、Q&Aを一番最後に行うことは必ず避けるようにしましょう。

その4:最後のアンカリング

アンカリングとは碇を落とす、という意味です。クロージングに入るというシグナルを出し、メインポイントをおさらいし、Q&Aを行ったら、最大の印象を焼き付ける時がやってきました。そのためには、スピーチ全体を通して伝えたかったたった1つのメッセージ、One BIG Messageを、簡潔なストーリーや、引用、パワフルな質問を投げかける、などの手法を通して伝えることが効果的です。

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