このコラムで何度か、7秒ー30秒ルールのお話しをしてきました。

スピーチをする際、最初の印象が全体の印象を決める、というものです。始めの7秒で話し手の印象が決まり、30秒で、話の内容が聞くに値するかどうか判断されるのです。それだけのインパクトがあるオープニングは、綿密に戦略的に作りこむ必要があるわけですが、クロージングはどうでしょうか。「始め良ければ終わり良し」ともいわれますが、スピーチにおいては当てはまりません。

「リーセンシー効果」をご存じでしょうか。普段は広告に関して使われるコンセプトで、「直前に接触した広告が購買行動に影響を与える効果」のことをいいます。つまり、人は、最後・最近に聞いたことが、もっとも印象や記憶に残る、ということです。これがスピーチにも当てはまるのです。

つまり、スピーチのクロージングで、いかに明確なメッセージを投げかけ、印象に残すかが非常に大切ということです。

今回は、スピーチが終わった後も、「あのスピーチは心に残っているな」と好印象を持続させるための、クロージングの4つのステップについて解説します。

STEP1: シグナル

クロージングに入る前に、「もうすぐ終わりが近づいている(だから大切なメッセージが続きますよ。注目してください!)」、というシグナルを送ります。ただし、「In Closing」、「最後に」、などのありきたりなシグナルでは面白くありません。もう少しクリエイティブに興味を引きましょう。

例えば、「Let’s wrap things up」、「As we come to the end of the road」、「I’m leaving you with this」、「本日の内容を振り返ってみましょう」、「皆さんとの時間も終わりに近づいていますが」などです。

STEP2: コールバック

スピーチの中で話したポイントを簡潔に要約します。重要なポイントがいくつかある場合には、「3つのA」、「SMARTゴール」、など、頭文字などを使って覚えやすく表現することも一つのコツです。

もしインターアクティブな場なら、このポイントを、聞き手に言わせるように仕向けてみるのも効果的です。

STEP3: Q&A

多くの講演会やセミナーはQ&Aで終了します。しかしブレイクスルーでは、Q&Aで終了するのはNGパターンである、とお伝えしています。なぜでしょうか?

前述のリーセンシー効果を思い出してください。伝えるべきメッセージが、一番後にインパクトを与えるメッセージでないといけないからです。Q&Aの時間を設けるのは大いに結構ですが、そこで終わってしまわないことです。優れたスピーチのクロージングには、あともう1ステップ残っています。

STEP4: Lasting Anchor-碇(いかり)を下ろす

クロージングに入るというシグナルを出し、話した内容の重要ポイントにコールバックし、Q&Aの時間を設けたら、持続する印象づくりが最後のプロセスです。最大限インパクトを与え、心に定着させるために、「碇」を下ろすようなイメージです。

そのためには、短いファイナルストーリーを語ることが効果的ですが、スピーチの全体でもストーリーを語っていたことでしょう。したがって、クロージングに持ってくるファイナルストーリーは、無駄を徹底的にそぎ落とし、簡単・簡潔・簡明でなければいけません。さらに、最後にもう一つのストーリーを聞いてもらうには、ファイナルストーリーを語る前に、簡単なTeasingをするのが効果的です。例えば、

「今日は4つのRについてお話ししました。○、○、○、○です。しかし実は最後にもう一つ、とても重要なRが残っているのです」

というようなイメージです。このようにTeasingをすることで、聞き手は次に発せられるメッセージに注目し、最後の最後まで興味を持続させることができるのです。