すべての仕事はセールスである

「セールス」または「営業」と聞くと、ある特定の人たちの仕事だと思われることでしょう。現に、営業部門、セールス部隊など、営業の専門分野が職業カテゴリーとしてあるくらいですから、もしあなたの仕事が人事関連だったら、自分はセールスパーソンだとは決して認識しないことでしょう。しかし、実はすべての人の仕事には「セールス」が含まれているのです。

あなたの職業が何であれ、仕事をする上で、チームメンバーや上司、部下、顧客、パートナー、プレス、株主……などなど、様々な状況で様々な人たちに対し、自分の意見を受け入れてもらうようコミュニケートをする場面というのは必ずあるはずです。そんな場面では、説得力を持って話し、相手の意識や行動などに変化を及ぼし、問題解決をする、というプロセスが欠かせません。

これこそが「セールス」なのです。すなわち、セールスというのは何もモノやサービスを売り込む職業のことだけを指すのではないのです。相手を説得する、納得させる、共感させる、賛同させる……ためにコミュニケーションを取ること、それこそがセールスです。パブリックスピーキングは、まさにアイデアを売り込む「セールス」活動です。

ですから、すべての人は2つの職業を持っているといってよいでしょう。「あなたの職業」そして「もう1つの職業」、つまり「相手を説得するという職業」の2つです。

しかし最高の「セールスパーソン」は、モノやサービスを売り込みません。そして「売っている」という感覚を相手に与えることがありません。

まず最初に何を売るべきか

では最高の「セールスパーソン」は、まず何を売るのでしょうか。セールスパーソンであるあなた自身への信頼を得るため、自分自身の売り込みをする、と考える方も多いかもしれません。これも実は大きな間違いです。売るべきものは「結果」です。

つまり、商品の機能性の高さなどをアピールするのではなく、その商品やサービス、あるいはあなたのアイデアや意見を取り入れたら、どんなベネフィットが得られるのか。そしてそれらのベネフィットが得られた時、どんな未来・生活・問題解決が待っているのか。それが「結果」です。

“I”主導の主語から脱却する

しかしながら、つい自分を売り込もうとして、気づかぬうちに“オレさま”プレゼンになってしまっているケースは多々あります。その1つに“I”の多用が挙げられます。

例えば、“I think”というフレーズはよく使われます。しかし、セールスのプロフェッショナルは、「Think」ではなく「Know」、つまり「…と思う」のではなく、「…だと知っている/確信している」から相手を説得しているのです。また、「I」を主語にして語ることで、話のフォーカスが相手ではなく、セールスパーソン自身に引き込んでしまい、相手との壁を作ってしまうのです。

イエール大学の調査によると、次の12語が、最も説得力のある単語だそうです。
•You
•Money
•Save
•New
•Results
•Easy
•Health
•Safety
•Love
•Discovery
•Proven
•Guarantee

プレゼンから“I”を省き、“You-focus(聞き手中心)”にシフトすることで、相手への説得力はグンと上がってきます。

具体性の高い言葉選び

聞き手は常に、“What’s in it for me?(それは私にとってどういいのか?)”という視点であなたの話を聞いています。

あなたの提案を受け入れたら相手はどんなベネフィットが得られるのか。自分自身のメッセージに対し、繰り返し“So What?(だからなんなのか?)”と尋ねてみましょう。

ご参考までに、説得力に欠ける、といわれている単語やフレーズも下記にリストアップします。
•Full service
•Proactive
•Professional
•Great
•Creative
•Paradigm
•Value added
•Customer relations
•Total quality
•Number one
•Consultant
•Relationship
•Win-win
•Long
•Family values
•Luxury
•All natural
•On sale
•Sales training
•High-tech
•Partnership

例えば、下記のような、多用されがちな表現も、実は説得力に欠ける表現となってしまいます。具体性に欠ける、ふわっとした印象を与えてしまうからです:
“We have been in business for so long, you can rely on us”
“We are number one in the market”

信頼を勝ち取り、相手を説得するためには、明確に証明できないことや、具体的イメージがわかない抽象的表現は避けるよう心がけましょう。