何かの会合に行ったら急に指名されて、コメントを求められたり、即興でスピーチをすることになり、あたふたしてしまった。そんな経験をしたことはありませんか?
これまでこの連載コラムでは、事前準備ができるプレゼンやスピーチ、を前提にお話ししてきましたが、実際のビジネスの場では、ミーティングや顧客との商談、会食、など、とっさに何かを考えて話さなければならない場面、というのも多々あると思います。とあるアンケート調査によると、「人前で話すことは死ぬよりも怖い、と思っている人が少なくない」という結果が出ていますが、事前準備ができるスピーチでもそうなのですから、突然に指名されて、準備する間もなしに話を迫られる、というシチュエーションの場合、その苦痛たるや……!!!
しかし即席で自社のビジネスのピッチングができる能力は、ビジネスマンにとっては必須の能力、といっても過言ではないでしょう。これは「エレベーターピッチ」ともいわれます。エレベーターの中で、口説き落としたい意思決定者にばったり出会ってしまった時、エレベーターに乗っている間の短時間で簡潔に説得力をもって即興でピッチングができるほどの能力をたとえて、「エレベーターピッチ」と呼ばれています。
今回はそんな即席スピーチの3つのコツをお話ししましょう。
即席スピーチのコツその1:与えられた質問やトピックをまずリピートする
突然に振られたら、慣れていないとあたふたしてしまいます。内容を考える時間は、立ち上がって演台まで歩くまでのものの数秒しかないことでしょう。その間に頭の中はパニック状態です。頭をフル稼働させても間に合いません。話をしながら内容を考えなければならないのです。数秒でも時間稼ぎができたらいいですよね?
そんな時は、まず「ただいまご質問いただいたのは(いただいた課題は)、○○○、ということですね。ありがとうございます」のように、まずはトピックをリピートするところから話し始めてみましょう。その間に時間稼ぎをしながら頭をフル稼働させて、何から話すか考える、というトリックです。また、とりあえずは話を始めたことで、不思議と自分自身も少し落ち着いてくるものです。
即席スピーチのコツその2:サンドイッチ型の構成にはめ込む
即席でスピーチを行う場合、慣れていないと、話があちらこちらに飛んでしまい、まとまりのない話になってしまいがちです。それを防ぎ、そしてどんな時にでもどんな話題でも対応できるように、まずは話の「型」をいつも持っておくとよいでしょう。
ここでおすすめするのは、「PREP」という型です。PREPとは「Point/Reason/Example/Point」の頭文字をとったものです。これはどんなスピーチにもいえることなのですが、伝えたいポイントがぼやけていては、スピーチを行う意味がありません。聞き手にとっては、最後まで話を聞かないと要点が分からない、という構成では、すぐに集中力が切れてしまいます。そこでまずは「要点を先に言う」癖をつけておきたいものですが、それに役立つのが、このPREPという型です。
まずは、話の要点(Point)を言ってしまいます。その次に、なぜそう言えるのか、理由(Reason)を述べます。次に、聞き手にとってわかりやすい身近な例(Example)を挙げながら、その理由をバックアップします。そして最後にもう一度、要点(Point)で締めます。つまり、サンドイッチのように、PointとPointで中身を挟んであげる、という構成です。このPREPという型があれば、どんな話題でも、必ず簡潔かつ論理的に話をまとめることができます。
即席スピーチのコツその3:「○つの例をお話しします」と数字を出してしまう
PREPで難しいのが、Exampleのところです。具体例が出せずにぼやけてしまったり、あるいは、だらだらと話が広がってしまい、ポイントを忘れてしまったり、というケースを何度も見てきました。これを防ぐためには、例を挙げる際、1つでも3つでもいいのですが、「○つの例(ストーリー、など)をお話しします」と数字を出してしまいましょう(その後、話を進めながらも必死で頭をフル稼働させ、○つの例を考えるのですが……!)。
つまりこういうイメージです。
私がお伝えしたい要点はこれです(Point)。なぜならこういう理由だからです(Reason)。ではなぜそう言えるのか、3つの例をお話ししましょう(Example)。まず1つ目は〜。2つ目は〜。最後に3つ目は〜。この3つの例で言えるように、要点はこれなのです(Point)。
こうすることで、話の構成に、さらに分かりやすいロードマップが加わり、聞き手にとっても、後に続く話の内容が理解しやすくなります。
即席スピーチに強くなるには、練習を積み重ねる以外方法はないのですが、上記のような3つの基本ポイントをマスターするだけでも、死にも勝るスピーチの恐怖はだいぶ和らぐことでしょう。
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