前回までで、仮説検証、分析がすべて終わりました。残すところはプレゼンテーションです。今回のコラムでは、そのプレゼンテーションについて解説します。
ピラミッドストラクチャーとは、キーとなるメッセージとその根拠をピラミッド構造で表したものです。効率よいコミュニケーションを図るための手法であり、相手に分かりやすくロジックを伝えると同時に、準備の過程でどういう分析が足りないかを発見するためにも使われます。
ピラミッドストラクチャーの作り方
ピラミッドストラクチャーの作り方は次のとおりです。
- まず、結論を言う(キーメッセージ)
- その根拠を3つに分ける(大分類)→結論、根拠A、根拠B、根拠C→結論の再確認、という構造で話す
- 根拠Aをさらにひとつの結論と考えて、根拠A、根拠a1、a2、a3、従って根拠A、という構造で話す(小分類)
- 最後に、スライドは1枚で1つのメッセージにする(ワンスライド、ワンメッセージ)
このように、ひとつ上位の箱を、3つの箱が支え、その3つの箱をそれぞれ小さな箱が支える、という構造で積みあがることから、この論理構成の方法はピラミッドストラクチャーと呼ばれています。
空・雨・傘」:根拠三分割の方法
「空・雨・傘」とは、「空を見て、雨が降りそうだから、傘を持って行こう」、というように、根拠を3分割して説明し、意思決定に至った説明をロジカルに行う手法です。
きわめて簡単なように思われるかもしれませんが、この「空・雨・傘」は、企業の意思決定を支援するフレームワークとして非常に強力なものです。
まずこの人物は、「今日は外に出かけたい」という方向性を持っています。そこでこの人物は空を見上げ、観察します。温度、湿度、雲行き、風の強さ、空の色…。これらは今日の天気を決定する大きな要因となるからです。そしてこの人物は予測を立てるのです。「今日は雨が降りそうだ」。これはあくまで予測で、あたるかもしれないしあたらないかもしれません。しかしこの人物はそう思い、そして「傘を持っていこう」ということを決めます。
ここで、「なぜ傘なのか?」というのが大事な点です。雨が降るとしても、他にオプションは色々あるはずです。電車ではなくタクシーにしようとか、レインコートを着ていこうとか。あるいは今日は出かけないようにしようという選択もあるかもしれません。しかしこの人物は、これらの選択肢がある中で、傘を持っていくことを決めるわけです。
「今日は外に出かけたい」というのは、「市場トップの座につきたい」というような企業が目指すベクトルです。それを実現するためには、「外部環境はどうなのか?」を分析します。これが「空を見る」の部分です。「雨が降りそうだ」というのは、外部環境分析の結果、導き出したマクロ環境や顧客、競合の動向などに関する「仮説」です。その上で、取るべきアクションを決めるのです。それが「傘を持っていく」です。
繰り返しになりますが、「なぜ傘なのか?」が大事な部分です。もし傘しか持っていないのならば、企業の場合、アクション決定の際にリソース制約という課題が存在しているということになるでしょう。「タクシーではなくて電車に乗りたいのだ」が理由であれば、それはターゲットの問題。そして「レインコートはスタイルに合わないから着ない」となれば、それはポジショニングの問題です。
見えてきましたか?「空・雨・傘」は、企業の戦略策定プロセスそのものなのです。従って、これまで行った分析を、「空・雨・傘」の手法でプレゼンテーションを組み立てることで、よりロジカルに、説得力を持って企業の戦略策定につなげていくことができるのです。
プレゼンテーションでは、下記のようにワンスライド・ワンメッセージを心がけ、誰が見てもキーメッセージとその根拠が明確に伝わるようにしましょう。
次回は最終回です。これまで見てきたロジカルシンキングのプロセスを総ざらいしましょう。