「グローバルで通用するロジカル・シンキング」、最終回の今回は、これまで11回にわたり学んできたロジカル・シンキングの手法を総ざらいします。

ロジカルシンキングの重要性

ロジカル・シンキングとは、ある課題に対し、さまざまな切り口から、かつ無駄なく漏れなく物事を考え、本質的問題を発見し、その問題に対して正しい方向性だと思われる「仮説」を立て、そしてその仮説を効率よく「検証」し、最終的に納得のいく判断を下す ―― というプロセスのことです。そして、ロジカル・シンキングのプロセスでもっとも重要なのは、「本質的問題を発見」し、「正しい問題(=本質的問題)を解く」ことです。

日常業務に追われる中で、自分が知っている、或いは現在分かっている事実を基にして、短絡的に結論を出し、部分的解決に走ってしまうケースは意外と多く見かけるものです。問題解決の際にまず重要なことは、「正しい問題を解く」ということです。間違った問題を正しく解いても、より深刻な問題に発展してしまいます。一見、「問題」だと思われることでも、あらゆる切り口から漏れなく課題を分析してみると、「本質的な問題」はまったく違うところにあるかもしれません。

だからこそ、ロジカル・シンキングを使い、そのプロセスの要である「本質的問題を発見」し、「正しい問題(=本質的問題)を解く」ことが重要なのです。

そのための基本的な思考方法として、「MECE(Mutually Exclusive Collectively Exhaustive)」をご紹介しました。「(各事柄の間に)重なりなく、(全体として)漏れなく」分析していく思考方法です。そしてロジックツリーというツールを活用して、MECEを「見える化」していくことが、ロジカルシンキングの出発点となります。

仮説立案、検証、分析

当たり前の仮説を出して、実験、検証しても、問題解決のレベルは上がりません。分析、論理、これまでの経験、連想、想像まで活用して、発散的に新しい方向に広がるような思考の方向性を持って、斬新な仮説構築を目指すことが必要です。それには、日々の出来事の中で常に仮説的思考を活用し、トレーニングすることが必要です。また、思考を整理するためには、数々のフレームワークが有効であることも本コラムで紹介しました。

ロジカルに物事を考える習慣をつける

具体的にプロジェクトを進める際、イッシューアナリシス・シートを作成し、それに沿って仮説立案、検証、分析の作業を行うことが効率的です。イッシューアナリシス・シートの基点はロジックツリーです。常にMECEを念頭に置きながら、思い切った仮説を立案し、それを検証するために必要な分析方法やデータソース、アウトプットのイメージを具体的に描きながらプロセスを進めていきます。

説得力ある論理構成

仮説の検証、分析を経て結論を導き出すことができたら、それを説得力のある論理構成でプレゼンテーションをし、チームや組織、クライアントからの賛同を得なければなりません。そのためには、ピラミッドストラクチャー、そして「空・雨・傘」の根拠3分割法を参考にするとよいでしょう。ピラミッドストラクチャーでは、「So What?」「Why So?」の思考に基づき、結論と根拠、そして根拠のそのまた根拠を導き出して結論を支えます。「空・雨・傘」は、企業の戦略策定プロセスそのものです。「空・雨・傘」に基づき、ワンスライド・ワンメッセージのプレゼンテーションを作成し、誰が見てもキーメッセージとその根拠が明確に伝わるように心がけましょう。

ロジカル・シンキングは、一朝一夕で身につくものではありません。英語の単語と文法を覚えたからといって、すぐに今日から流暢に会話ができるようになるわけではない ―― というのと同じです。「継続的に練習」し、「スキル鍛錬を積み重ね」ることが大切です。日々の生活の中で、常にロジカルに物事を考える習慣をつけてみることをお薦めします。

総合演習

では最後に、皆さんの職場、或いは日常生活の中で、何かひとつ課題を具体的に考えてみてください。

「同社の営業利益を5%アップするには?」
「海外支社のローカル人材の離職率を半分に下げるには?」
「営業の結果、成約率を20%アップするには?」
「ヒット商品を開発するには?」
「生産コストを10%下げるには?」
「英語力を向上させるには?」
「よい転職先を見つけるには?」
「子供の数学の成績を1段階上げるには?」

身近な課題から企業全体にかかわる大きな課題まで、ロジカル・シンキングの手法は幅広く使えます。ぜひ、今日からロジカルシンキングを使ってみてください。もしプロセスの途中で迷ったら、弊社アスパイア・インテリジェンスにご相談ください。ご愛読ありがとうございました。