ノンネイティブはアドバンテージ

スピーチは、文字で書かれたものとは異なり、聴衆の耳から耳へと素通りしてしまいます。惹きつけられる“何か”がなければ、伝えたいメッセージも伝わりません。もし、何か難しい言葉で長々と説明を続けたら、最初の30秒で既に聴衆は飽きてしまい、心は離れてしまいます。ですからスピーチをする際には、重要なメッセージであればあるほど、簡単な言葉で、短い文章で、ゆっくりと、小学生にも理解できるような簡潔さで伝えなければいけません。

簡単な言葉。短い文章。ゆっくり。

英語のノンネイティブスピーカーは、こういう話し方をしませんか。高度な単語を並べて早口でまくし立て続けることなんてノンネイティブには至難の業ですから。

気がつきましたか。ノンネイティブスピーカーならではの要素は、実はグローバル・パブリックスピーキングにとって、必須の要素なのです。ですから、「英語力に自信がないからスピーチはダメ」と考えたあなたに申し上げます。「ノンネイティブはアドバンテージなのです!」。ただ、グローバル・パブリックスピーキング上達のためのプロセスとコツを知らないだけなのです。

東京オリンピック招致の際の日本人チームのスピーチはまだみなさんの記憶にも新しいことでしょう。「お・も・て・な・し」に注目が集まったものの、私が最も印象深かったのは、佐藤真海さんのスピーチです。必ずしも英語上級者ではない彼女のスピーチは、言葉の壁を越えて、文化の違いを越えて、世界中の人たちを感動させた素晴らしいスピーチでした。そこには人並みならぬ苦悩と闘うドラマあり、明るい将来像が描かれ、どんな人種であっても心に響く明確なメッセージがありました。

語学力に頼ることなく、言葉や文化の壁を打ち破り、異文化の人々の心を魅了することができる。そんな佐藤真海さんのようなスピーチが、「グローバル・パブリックスピーキング」です。

ではどうしたら、グローバル・パブリックスピーキングを習得することができるのでしょうか?

この新連載コラムでは、この答えを紐解いていきます。