感情はウソをつかない
今私は、選ばれたプロフェッショナルスピーカーだけが受けられる、4日間の集中ブートキャンプを終え、ニューヨークに戻る帰路でこの記事を書いています。 ニュージャージー州のとある閑静な街に拠点を構える「トレーニング場」には、北米はもちろん、世界中からプロフェッショナルスピーカーが集まり、お互いに切磋琢磨しながら研鑽を積んでいきます。集まったプロフェッショナルスピーカーは40人。
info@aspireintelligence.com | 212-527-7540 | English
今私は、選ばれたプロフェッショナルスピーカーだけが受けられる、4日間の集中ブートキャンプを終え、ニューヨークに戻る帰路でこの記事を書いています。 ニュージャージー州のとある閑静な街に拠点を構える「トレーニング場」には、北米はもちろん、世界中からプロフェッショナルスピーカーが集まり、お互いに切磋琢磨しながら研鑽を積んでいきます。集まったプロフェッショナルスピーカーは40人。
つい先日まで、7月5日に出版された書籍『20字に削ぎ落とせ ワンビッグメッセージで相手を動かす』の日本全国出版記念ツアーを行っていました。 その出版記念イベントに参加してくださった方の中に、政治家のMさんがいらっしゃいました。イベント終了後、とても参考になった、ぜひとも実践したい!と興奮気味にお話ししてくださるMさんから、一つ質問を頂きました。
ビジネスプレゼンにストーリーを組み込むことで、どれだけ差が出るものなのでしょうか。 実際に、ストーリーを組み入れることで、一度断られた3億円の投資を獲得できたケースを、ご紹介しましょう。
ストーリー、ストーリー、ストーリー!! とはいいながら、ビジネスパーソンが行うプレゼンで、ストーリーを巧みに組み込んでいる事例は、日本ではまだまだ多くは見られません。 そんな中で、素晴らしいストーリー作りをしているな、と感心するのが、トヨタ自動車がYouTubeで配信している、トヨタイズムというチャンネルです。
私は2013年から毎年、国際スピーチコンテストに出場しています。これは、トーストマスターズという、スピーチの向上を目指して互いに学び合う、アメリカ発の国際教育団体が主催しているもので、現在世界143カ国に1万6,600支部、35万7,000人のメンバーを有しています。
人は「コントラスト」に心が揺れる ここまで、コーポレートストーリーの作り方をひと通りご説明しました。さらに聞き手を引きつけるストーリー作りのコツとは、なんでしょうか。 ビジネスにおいて、商談であれ、商品デモであれ、社内ミーティングであれ、伝えたいメッセージを受け入れてもらえるよう、相手を説得する必要があります。しかし人が説得されるためには、頭で情報を理解しただけでは不十分で、心が揺れ動くことが必要です。つまり人は心が揺れると共感しやすいものなのです。 前回まででご紹介した、よくあるパターンの「事例紹介」では、事実が事実として情報提供されているだけですが、ストーリーになると、登場人物が出てきて彼らがセリフをしゃべり、彼らの葛藤や変化、学びなどが見えます。そういった人間ドラマが見えると、人は、「自分もそうだ! あるある! うちの会社も似たようなことがある!」と、身近に感じることができるわけです。 では、その「心が揺れる」ストーリーをどう作るか。その大切な要素として「コントラスト」があります。 人が最もストーリーに引き込まれるのは、ドキドキしたりハラハラする心の動きを感じられるからです。安泰だった状況に、危機や困難が訪れ、解決しそうになったら一難去ってまた一難と、山あり谷ありのストーリーが繰り広げられます。つまり人は、コントラストのあるストーリーに引き込まれるのです。 例えば、皆さんの好きなエンターテインメント映画を思い浮かべてみてください。 『スター・ウォーズ』でも『ロード・オブ・ザ・リング』でも『ハリー・ポッター』でも、途中に「ドキドキハラハラ」があって、主人公と一緒に困難をかいくぐり、手に汗を握る体験をするからこそ、最後のハッピーエンドでスカッとしたのではないでしょうか。 こうした人気映画は、第2回コラムでお伝えした通り、3幕構造になっており、まずは第1幕で、主な登場人物が出てきて、ストーリーの状況設定が行われ、次の第2幕では、その状況に何らかの危機が訪れて、主役の登場人物は、様々な困難が降りかかりながらも、果敢に立ち向かい、危機的状況に変化をもたらします。そして最後の第3幕では、その変化の結果得られた新たな状況が描写されます。 よく「サスペンスに満ちたドラマ」などといいますが、この「サスペンス」とは、観客に不安や緊張の心理を与え、物語の結末を知ることへの希求を抱かせ、心をつなぎとめる手法のことなのです。 ストーリーは、「モールエスカレーター」方式で もし、映画『タイタニック』で、タイタニック号が氷山にぶつかってすぐに沈没していたら、映画がすぐに終わってしまい、聞き手の興味は持続しないことでしょう。これはいわばエレベーターのように、目的地まで急上昇、あるいは急降下するようなストーリー作りです。 この「エレベーター方式」は、聞き手を最後までひきつけ続け、動かすところまでもっていくことを目的とするプレゼンやスピーチでは、避けたいものです。 逆にタイタニック号が氷山にぶつかった後に、いつまでたっても足元が浸水しているだけの状態が続いていたら、映画の観客はすぐに見飽きてしまいます。いわば「歩く歩道」のように、どこまでいっても平らな進行だからです。 この「歩く歩道」方式もプレゼンやスピーチでは避けたいものです。 ではコントラストを出すためにどういう上がり方がいいのか。それは、「モールエスカレーター」方式です。 ショッピングモールのエスカレーターを使った昇り方を想定してみましょう。 モールエスカレーターで2階へ昇ると周りにショップがあります。そのショップをぐるりと見て回ってから、また次のエスカレーターで3階に上がるという作りになっています。首都圏の方なら表参道ヒルズを思い起こすと、イメージを浮かべやすいでしょう。デパートのエスカレーターでも見かけるかもしれません。 映画『タイタニック』も、この「モールエスカレーター」形式で進んでいきます。 氷山にぶつかりボイラールームに浸水した(上昇)、でも船の上層階にいる人たちは全く気付かず優雅に過ごしている(安定)、やがて2階も浸水し始める(上昇)、でもキャプテンは楽観視(安定)、手錠をかけられていた主人公ジャックの部屋にも浸水が始まる(上昇)というように「コントラスト」が次々と現れるからこそ、緊張感が徐々に高まり、興味が長く持続します。 ...
前回、M社の例を挙げて、事例紹介とストーリーの違いを実例でお見せしました。下記のとおりです。 M社の事例紹介(ケーススタディー形式) 背景:大豆商品を扱う中小企業M社が開発した新商品に類似商品が現れ、この類似商品を開発販売した大手N社により、市場シェアがどんどん取られてしまう状況に置かれた。 課題:大手N社のブランド認知度や幅広い販路に負けず、自社開発商品の売り上げを確実に伸ばし、市場シェアを回復することが喫緊の課題である。 ソリューション:M社独自の特許技術の特徴を、各顧客にも理解してもらえるよう、中小企業ならではの草の根営業活動を行う。また、特許侵害の訴訟を起こすことで、法的措置という側面からもN社と戦う。 結果:N社が自発的に商品を撤退。M社の市場シェア回復。 M社のストーリー(一般的なストーリー形式) 第1幕:M社は新商品開発が得意な大豆製品メーカーで、市場でも常に良い地位を保っていました。ある時、地場産業とも協力しあい、卓上でたった10分で自家製豆腐が簡単に出来上がってしまう、焼き物の器と、豆腐ができる国産大豆の豆乳と、にがりのセットを開発し、市場からの反応は非常に良いモノでした。地場産業に関わる人々からも、地域経済に貢献していると、非常に賛同を受けていました。 第2幕:ところが、M社の新商品の売れ行きを見ていた大手食品企業のN社が、類似商品をあっという間に開発し、販売を始めたのです。大手企業であるN社はブランド認知度もM社の比ではありません。M社は特許侵害として訴訟を起こすと同時に、自社商品にしかなしえない特徴を顧客に地道に訴えかけて回り、顧客離れを回避することができました。 第3幕:その結果N社はいつの間にか同商品を撤退させ、M社は着実に国内外で市場シェアを伸ばしていきました。 「明確さ」が決め手となる3つの要素 M社のストーリーは事例紹介と比べると、だいぶ興味を持って聞けるのではないでしょうか。 しかし、ストーリーではまだ不十分なのです。このストーリーを聞いて、「なるほど、学んだな!」と感じたでしょうか? 「そうだったんだ、良かった良かった」で終わって満足ではないでしょうか。もし、子供に読み聞かせる絵本だったり、友人に話して、共感してもらうだけが目的ならこれで十分です。 ビジネスの場でこのような反応を得ることは、成功とは言えません。もう一歩先まで見据えて、聞き手から何らかの行動を引き出す。つまり、結果を出して初めて成功と言えるのではないでしょうか。 では、ビジネスにおいて、事例紹介をストーリーへ、ストーリーをさらにコーポレートストーリーへと進化させ、相手を動かすところまで到達するにはどうしたらよいのでしょうか。 それは、一般的なストーリーには足りない、3つの要素を組み込むことです。 1つ目は、明確なゴールです。 ビジネスプレゼンの際、最初に考えたいのは、何を伝えるかよりも、「そのプレゼンの結果、相手から何を引き出したいか」というゴールを明確に設定することです。そして、そのゴールを達成するためには、どんなストーリーをどのように伝えるべきなのかを決めなければなりません。 2つ目は、明確な学びです。 コーポレートストーリーから聞き手が得られる学びとは何でしょうか? 聞き手にとって何らベネフィットもないプレゼンなら、「ああそうなんだ」で終わってしまい、プレゼン後は忘れ去られてしまうことでしょう。聞き手にとっての学びが引き出せなければ、ゴール達成も実現しえません。例えば、「この商品を購入したらこんな便利な生活が待っているんだな」ということです。 ...
プレゼンは聞き手を「TALL」にするもの そもそも、プレゼンが果たす役割とはなんでしょうか。 インターネットやモバイル技術など、コミュニケーション手段が多様に手に入る今日、情報伝達は容易にできます。なぜ、生身の人間が特定の時間に特定の場所にわざわざ行って、話を聞く必要があるのでしょうか。 …
比べてみてください。まず、数年前に行われた、某日本企業トップによるプレゼンテーションのオープニングです(実名は変えています)。 …
早くも年の瀬が迫っていますね。今年を振り返ってみると、筆者はアメリカでプロフェッショナル・スピーカーとしてデビューした昨年に続き、今年はアメリカのプロフェッショナル・スピーカー・エージェンシーにも採用され、着実に、日本人という枠を超えて活動ができるようになってきました。来年はさらに、全米トップレベルのプロフェッショナル・スピーカーにも負けないクオリティーを目指していきたいと思っています。 …